機械の研究 2024年7月1日発売 第76巻 第7号
巻頭記事「熱弾性流体潤滑ソリューション」
熱弾性流体潤滑(Thermo-elastohydrodynamic lubrication、Thermal EHL または TEHL と略される)とは、トライボロジー辞典によると
すべりが存在するときの弾性流体潤滑解析をおこなうためには、圧力と温度による粘度変化を考慮した熱レイノルズ方程式、弾性変形からの膜形状計算式のほかに、せん断発熱を含む潤滑油膜の熱収支を表すエネルギー方程式および固体内の熱伝導による固体表面温度の計算式を同時に解く必要があり、このような問題を熱弾性流体潤滑という
と定義されている。
熱弾性流体潤滑(TEHL)は、生起する圧力が極めて高く、かつ滑りや転がりをともない潤滑されている局所的なしゅう動部を対象としており、部材の弾性変形や潤滑油の物性値変化および発熱やせん断速度の影響が無視し得ない条件における潤滑状態のひとつに位置づけられることになる。本記事では、これらの定義や説明を踏まえつつ、TEHLに関する基本的なモデルや基礎的な理論式および歴史的な背景や最近の研究動向などについて、弾性流体潤滑(EHL)および熱弾性流体潤滑に関する記事なども参考にしながら、足早に解説する。
風間俊治
版型
B5判
目次
展望・総説・総論
熱弾性流体潤滑ソリューション
室蘭工業大学 もの創造系領域
機械ロボット工学ユニット 教授
風間俊治
ノイズではないランダムさを扱う応用力学
東京農工大学工学府 機械システム工学専攻 准教授
花崎 逸雄
円柱の渦励起振動と流体力(1)
単一円柱の振動
日本大学 理工学部 海洋建築工学科 特任教授
近藤 典夫
複合材料の力学入門(5)
拓殖大学 名誉教授
笠野英秋
連載講座
生体機械工学(10)
電気インピーダンスによる細胞分布計測
工学院大学 工学部 機械工学科 教授
橋本成広
光ファイバー型赤外線輻射温度計の設計製作から計測まで(15)
レーザ加工温度の測定例(その4)―フォーミング・矯正
金沢大学 名誉教授
上田隆司
機械構造用金属材料の超高サイクル疲労(60)
7. VHCF-5 〜 VHCF-7 の 10 年間の研究動向(13)
12. 微小欠陥に対する√areaモデルによる村上らの研究
立命館大学 名誉教授
酒井 達雄
機能材料と構造の力学(6)
ゲルの力学
島根大学 総合理工学部 教授
森本卓也
特別講座:機械系大学院入試問題演習
(49)「機械力学:早稲田大学2023年夏季実施より」
神奈川大学 名誉教授
伊藤勝悦
一杯のコーヒーから(209)
社会デザイン その7―状況適応人工物
元 Consulting Prof., Stanford Univ
慶應義塾大学 (顧問)
福田収一
工学・工業界ニュース