肥満症診療ガイドライン2022

肥満は体脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態であり,肥満がただちに疾患に分類されるわけではない。日本肥満学会は肥満者のなかから医療の対象となる集団,すなわち,減量によって合併している健康障害の改善や,将来起こり得るさまざまな疾病を予防することが期待できる集団を選び出すために「肥満症」の概念を提唱し,この概念に沿った診療の実施を推奨している。治療対象をBMIのみで定義するのではなく,健康障害の合併や内臓脂肪蓄積に基づいて抽出するという考え方は,国際的にみても極めて先駆的なものといえる。 2016年版の発行以降に,小児や高齢者の肥満と肥満症に対する国内外の知見が増えたほか,おもに高度肥満症を対象としてわが国でも外科療法が保険収載され,その有用性が検証されるなど,肥満症の診療を取り巻くさまざまな変化がみられている。さらに,長らく進展に乏しかった肥満症治療薬の開発に関しても,日本人を対象として良好な治験結果が公表されるなど,新たな肥満症治療薬が登場する兆しがみられる。 しかし,肥満や肥満症をもつ個人のQOLの維持・向上を,個人に対する医学的介入のみで十分に達成することは難しい。肥満や肥満症の