なんとめでたいご臨終
メディア掲載レビューほか 【書評】旅立つ人も見送る人も「ありがとう」といえる在宅医療/評者・奥野修司(ノンフィクション作家) 人生の最期を自宅で過ごした人たちの、奇跡ともいえるエピソードがぎゅっと詰まった本である。 人にはいずれ死が訪れる。そのとき不安がなく、笑って逝けるなら、死はちっとも怖くない。 書き手は、そのことを在宅医療の現場で実践し続けている小笠原文雄さんである。 かつて小笠原さんの往診に同行させてもらったとき、死に逝く人と笑いころげながら話をするのを見て 唖然とした記憶がある。死は忌むべきもの、だから見送った家族は怒涛の涙を流した。 ところが小笠原さんの看取りはそうじゃなかった。とりわけ僕の常識をふっ飛ばしたのは、 臨終直後のご遺体の前で、家族と一緒に笑顔で記念写真を撮ったときだ。 ええっ、亡くなったばかりなのに笑顔でピース あのときは心臓が飛び出すほど驚いたが、 小笠原さんは、さも当然のように言う。 「旅立つ人が希望死・満足死・納得死ができたなら、離別の悲しみはあっても、 遺族が笑顔で見送ることができるのです。『なんとめでたいご臨終』と言わずにはいられません」 そん