新しい算数研究2025年6月号 新算数教育研究会/編

◆本の仕様
読者対象:小学校教員・中学校教員・大学教員
出版年月:2025年5月28日

特集:算数の教材の本質を探る

本号では,指導が難しいとされる教材に焦点を当て,数学的に考える資質・能力を育む観点から指導展開を再考することをお願いしました。
数学的に考える資質・能力を育む視点から,算数科において指導が難しいとされる教材がどのようなもので,その本質をどのように捉え,指導していくべきかについて焦点を当て,2つの視点から実践的な提案をしていただきました。
 視点1では,既習概念の意味が変わる内容の指導として,4年生の小数倍を取り上げていただきました.5年生の小数のかけ算やわり算では,「かけると大きくなる」「わると小さくなる」という暗黙のインフォーマルな知識が覆される場面があります。小数倍の指導の難しさとその要因を踏まえ,既習概念の意味が変わる内容における数学的に考える資質・能力の観点から,教材の本質を探る授業実践が提案されました。
 視点2では,視覚的に見えないものを数値化する内容の指導として,5年生の割合を取り上げていただきました.倍や割合など,日常生活の中で視覚的に見えないものを数値化したり,それを解釈したりする内容をどのように理解させるかが問われます.4年生では,ゴムや包帯を用いて,同じゴムや包帯であればその伸び率は長さによらず変わらないことを確認し,5年生では, シュートの成功率(5本中3本) などを学習し, これを「全体を1としたときの割合」として,0.6に相当することを学びます。これらの学習を終えた後,暗黙のうちに仮定していた比例を批判的に振り返り,折れ線グラフを使いながら未来予測を試みる実践が提案されました。
 2つの実践はどちらも挑戦的な内容であり,今後の指導において非常に参考になるものです。ぜひ,本授業実践のよさをご理解いただき,課題となっている点についてさらなる授業実践を積み重ねていただければと思います。この積み重ねこそ,より良いものを作り上げていく唯一の手段だと考えています。」