早逝の巨匠がパリ滞在時に買い求めた人形を大胆な筆致で描き上げた名作。
生命力あふれる表情や色遣いは若き天才画家の魂を宿すようです。

■わずか30年という短い生涯を駆け抜けた天才画家・佐伯祐三画伯。パリの街角ある建物に、ポスターや看板の文字を取り入れ、独特の荒々しいタッチで描いた作品は、今なお不動の人気を誇ります。6年足らずの画業で遺した作品のほどんどはパリ滞在時の作品ばかりであり、この度ご紹介する『人形』もそのうちの一つです。
■モチーフは佐伯画伯がパリのオペラ座通りの骨董店で見つけ、心惹かれて買い求めた革製人形。サロン・ドートンヌで入選した一九二五年、画伯27歳の時に描かれたものです。米子夫人は回想で「赤い羽根のついた帽子をかむり、少し横目をつかっていて髪の色は絹糸、肩や乳の線が生きた人のようにみえた」と語っているほど、画伯にとって思い入れのある品でした。現在、原画は日本最大級の佐伯作品を要する中之島美術館に所蔵されています。
■佐伯画伯といえば、壁、文字、看板に加え、重厚感ある色調のイメージが強いですが、本作は華やかで人目を引き付けます。深い緑色を背景に鮮やかな赤い帽子やドレスとのコントラスト。そして小粋な流し目、微笑みを浮かべた紅色の唇など、表情が生き生きとしており、もとは人形なのに人間らしい生命力がみなぎっています。
■画伯らしい大胆なタッチの本作は、異郷の地・パリで輝いた若き天才の魂を宿しているかのようです。それに呼応するように熟練絵師を要するパリの名門・アールリト工房により、23版23色もの労力をかけて、リトグラフとして忠実に蘇らせました。安心してご所蔵いただける工房証明書付き。限定300部制作のうち10点限りでお届けします。


佐伯祐三 氏
“早逝の天才画家 佐伯祐三 略歴
明治31年、大阪生まれ。大正13年、初めてパリにの土を踏む。その後、5年の画家生活の中に佐伯の活動は凝縮されている。パリ滞在中は里見勝三、小島善太郎らと交流を深め、同時にセザンヌ、ゴーギャン、ルノワール、ヴラマンクなどの作品に学ぶ。しかし、特に影響を受けたヴラマンクからアカデミズムの匂いがすると非難されたことで作風を転換。その後、モチーフ選びに注力し、帰国。大正14年、本作『人形』を完成。国内では佐伯の作品について多くの議論がなされ、肯定的な評価と批判が相半ばする状態であった。昭和3年、二度目の渡仏中に心身を病み逝去。享年30。