新源氏物語 霧ふかき宇治の恋(上) (新潮文庫)

◆商品名:新源氏物語 霧ふかき宇治の恋(上) (新潮文庫)
よみがえる悲恋。源氏物語を読むなら、名訳で。名著『新源氏物語』刊行から12年の歳月をかけて完成させた、著者念願の続編。平安王朝の宮廷ドラマの華麗な覇者、光源氏の、因果応報ともいうべき秘められた業を背負って生れた、もの静かな貴公子・薫。彼を敬愛するがゆえに、その切実な求愛に応えることを拒みとおして逝った大君。運命の恋人たちの愛は、さらに変転しながら、川をくだる……。流麗な文章と巧みな構成を以て、世界の古典を現代に蘇らせた田辺版・新源氏物語、待望の完結編宇治十帖上巻。【目次】光のあと花匂う若宮の巻移り香ゆかしき紅梅の使者の巻竹河に流れしわかき恋の巻われを待つらん美しき橋姫の巻寄る蔭むなしき椎が本の巻総角にむすびこめし長き契りの巻亡き人恋しき春の早蕨の巻古き恋の夢はなお宿木の巻【著者の言葉】(この作品は)私なりの現代風の解釈を加えてわかりやすく、そして小説のおもしろさというものを十分にご紹介できるよう努めながら訳したつもりです。宇治十帖は、近代小説の骨格をかなり備えていて、構成もきっちりしていますし、人物や心理の描写もまことに近代的です。殊に主人公の薫と大君というヒロインの純愛といいますか、お互いに理想的な恋人であろうとして、とうとう添い遂げることができなかった恋は、現代の若い人々の心を打つことでしょう。(下巻巻末理想を追い求める恋人たち)【本文冒頭より】(――自分はどこから来たのだろう……いったい、自分は誰の子なのだろう……)青年・薫の悩みは深い。しかもその悩みを人にうちあけられない。心に秘めたまま、いままできた。それが薫に神秘な陰影を与え、どことなく、普通の若者とは違った雰囲気を身辺に漂わせている。薫はとりたてて美青年というわけではない。しかし、何となくなまめかしいところがあり、表情や挙措に気品が添って、思慮ぶかい、老成した感じを人に与える。……田辺聖子(1928-2019)大阪生れ。樟蔭女専国文科卒業。1964年『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニィ)』で芥川賞、1987年『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』で女流文学賞、1993(平成5)年『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞を、1994年菊池寛賞を受賞。また1995年紫綬褒章、2008年文化勲章を受章。小説、エッセイの他に、古典の現代語訳ならびに古典案内の作品も多い。