東文彦(阿部誠・著)A5/200頁
文彦は、作家三島由紀夫の学友として知られています。三島の言葉に「現在の芸術全般には、あまりにも「静けさ」が欠けている」とあります。派手で華やかな私達の時代の中では、文彦の作品はあまりにも静かなものとして反時代的な存在であると言えます。しかしたとえ表面的には地味で目立たないように見えたとしても、簡単に切り捨ててしまうことはできません。奥底にあるものが何であるのかを見極めてみることが大切でしょう。文彦の作品の「静けさ」に耳を傾け、そこから何かを聞き取るという姿勢が、私達には必要なのではないでしょうか。現代の慌しい時間の流れの中で私達が見失いがちな何ものかを、文彦の作品の中に見つけ出すことができるかもしれません。
目次
一、東文彦の生涯(二つの苦難)
1、第一の苦難
2、第二の苦難
二、東文彦の作品
1、「魔縁」(結核発病に直面して)
2、「幼い詩人」(夢の大切さ)
3、「浅間」と「凩」(善悪・人間・自然)
4、「方舟の日記」(音の美しさ)
三、三島由紀夫の沈黙
1、十代の頃の交友
2、『城下の人』と文彦
四、東文彦と石光眞清
1、眞清の生涯
2、文彦とのつながり
五、三島由紀夫と熊本
1、神風連の乱と『城下の人』
2、三島と熊本
3、自決前に書かれた序文
六、現在の東家