弓の理科〜弓道実験ノート〜(澤村光仁・著)A5/164頁
『事実』をもって、弓道の核心に迫る!
本書が扱うのは、これまで語られることの少なかった、弓道における射技・射法以前の「物理的データ」である。弓力の実測値、矢の挙動を高速動画で可視化した画像、そして長年の疑問から生み出された検証の記録。そこにあるのは、推論でも思想でもなく、ただ静かに横たわる『事実』だけだ。
弓道は精神性の高い武道ゆえ、物理的分析は敬遠されがちだ。しかし、内面が深い世界だからこそ、客観的な土台が必要ではないか。弓道界に流布する知識や論文に潜む物理的な誤りに気づいたとき、もっと「確かめてみたい」「見てみたい」という欲求が生まれた──それが本書の原点である。
弓道はこれからどこへ向かうのか? 精神性を重んじるのか、それとも科学的な理解を深めるのか? ──その答えは読者に委ねられる。だが、武道・芸道・スポーツとしての弓道を問うなら、最低限の物理的事実を知ることは、決して無駄ではないはずだ。
これは弓道を揺るがす本ではない。しかし、弓道を深く愛する人ほど、必ず何かが揺らぎ、そして新たに何かが見えてくる──そんな一冊である。
『目次』
準備 弓力の記録と高速動画撮影による観察
1.弓力の測定記録
2.高速動画撮影による観察
I.弓力の変化
1.環境による弓力の変化
2.〓高の変化が弓力に及ぼす影響
3.弓力変化に対する諸条件影響の分離
4.弦上がり
II.矢所の前後に影響を与える因子
1.水平方向の狙い
2.和弓におけるアーチャーズパラドックス現象と角見
3.狙いと矢所
III.矢所の上下に影響を与える因子
1.矢束のバラツキと矢所の変化
2.弓の保有エネルギーと矢重量の最適化
3.離れで弦はいつまで矢を加速しているか
4.〓の高さが矢の速度に及ぼす影響
5.離れの瞬間筈は僅かに上へ動く
6.発射時の矢の水平維持
IV.矢所の揺らぎ
1.狙いの揺らぎ
2.矢の回転
V.避けて通れない項目・他
1.弦音
2.弓返り
3.弦の張力
4.弓も頑張っている
5.矢だって頑張っている
6.高速移動体の映像歪
あとがき