プロセスを自在に設計する PFDを使いこなそう 梶本和博 派生開発推進協議会T21研究会 本・書籍

本書は故 清水吉男氏が派生開発推進協議会(AFFORDD)で実施していたPFD勉強会の講義資料に基づいています。清水吉男氏とともにコンサルティングを行っていた梶本和博氏を中心に「清水吉男氏が伝えたかったこと」を整理しました。

PFDとはProcess Flow Diagramの略であり、清水氏がDFD (Data Flow Diagram)を基にして、人が行う作業版にアレンジしたものとなります。

発売日 : 2021/5/29
全167ページ

※この本はオンデマンドで作成・印刷されています。
1980年代、清水氏は、複数の開発案件を同時に実施していました。混乱せずに対応するためには、仕事を中断しても「いつでも中断箇所から開始できる」ようにしなければなりません。そこで、自身の仕事を見える化するために、構造化設計で定番のDFDを用いましたが、成果物の状態が見えづらいという問題が残りました。

ちょうどその頃、清水氏は、メインフレームのリソースを効率良く使うための方式であるタイムシェアリングシステム(TSS:Time Sharing System)を学ぶ機会を得ました。TSSは、細かく使用時間を区切ることで、1つのCPUを複数のユーザーが同時に利用できるようにしているものです。今の仕事を止めて別の仕事をやって、またその仕事に戻ってくることを実現するためには、この考えかたが使えるのではないかと思われたようです。

また、当時、清水氏はMacintoshを利用していました。Macintoshの中には、Claris MacProjectProというプロジェクト管理のソフトウェアがあり、完成が一番早い成果物や一番遅い成果物が、一目で分かるものでした。
このような、TSSの時間を区切る考えかたや、DFDのプロセスと成果物のつながり、成果物を記載する図法などを鑑みて、PFDを考案したとのことです。

このようにして生まれたPFDは、「人が行う作業と成果物」を記述するため、自身のソフトウェアの開発プロセスに利用できます。構造化分析が一般的になり、DFDがシステム開発の業務分析時に利用されていますが、分析時のみにしか使わないということでは、プロセス設計の技術は身に付きません。自身のソフトウェアの開発プロセスにPFDを利用することで、構造化設計の考えかたを習得できることに加え、生産性の向上にもつなげられることが分かり、多くの人々に使っていただきたく、方法論として確立したのです。

清水氏は生前、オフショア化が進んだ日本の「技術の空洞化」に危機感を抱いていました。今後の日本の未来を支えていく皆様には、自身でプロセス設計を行い、自由自在にプロセスを扱えるようになってほしいという思いを込め、勉強会や多くの企業でコンサルティングを行ってきました。本書は、そのような清水氏の思いを受け継ぎ、清水氏の言葉をなるべくそのまま皆様にお伝えできるようにまとめています。

本書をお手に取っていただいた皆様には、ぜひPFDの書きかたを身に付け、開発プロジェクトに適用し、更なる生産性の向上をめざしていただけると幸いです。


梶本 和博 (かじもと かずひろ)
1975年からソフトウェアの世界に入り、オンラインシステムにおけるソフトウェア開発設計に携わる。
1980年代半ばに組込みシステムの世界に転じ、この頃清水吉男さんと出会う。
ページプリンタの黎明期からオンラインパブリッシング向けプリンタの企画・開発を経て、1990年代半ばにソフトウェア品質・生産技術の世界へ。
2000年代初期に、ソフトウェア開発設計時代に遭遇したCMMに関わりソフトウェアプロセス改善にも取り組む。
ソフトウェア品質・プロセス改善の傍ら1990年代後半から清水さんのコンサルティングやセミナーを企画、「QCD達成」に向けての技術やUSDM・XDDP・PFDを社内に啓蒙。
2000年代半ばから社内ソフトウェアプロセスコンサルタント・ソフトウェアプロセスアセッサーとして活動。

2010年、派生開発推進協議会の設立に関わり、派生開発の技術の発掘とUSDM・XDDP・PFDの普及活動に参画。USDM・XDDPコンサルタントを経て今に至る。


派生開発推進協議会T21研究会
派生開発推進協議会(AFFORDD)は、派生開発が効果的に行われる技術の開発や普及、さらにはそれによって得られた「余裕」により、新たな技術の獲得や革新が進む状態を作れるよう後押しすることを目的に設立された非営利団体である。
主な手法として清水吉男氏が考案した「XDDP (eXtreme Derivative Development Process)」「USDM (Universal Specification Describing Manner)」「PFD (Process Flow Diagram)」を取り扱っている。
派生開発推進協議会の会員のうち、派生開発をもっと学びたいというメンバーが派生開発にまつわるテーマの研究会に参加している。
2021年5月29日現在、T1~T22の研究会がある。
T21研究会は「PFDによるプロセス設計」をテーマとして、PFDの効果的な活用方法を研究している。