「ジョブ型雇用時代」のキャリアマネジメント支援論 平田史昭 松村直樹 本・書籍
「キャリア自律」がうたわれる昨今においては、従来の終身雇用は崩壊の兆しをみせ「ジョブ型」の雇用慣行が定着化しつつある。そのような時代のなかで、従来型の指示系統やマネジメントスキルがゆきとどかなくなっている。
本書はそのような悩みを抱えるマネジメント層に「PROG」というテストツールを活用することでのマネジャーとメンバーの対話の活性化を促し、仕事へのつなげかたについて解説する。
出版社:クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
発売日:2022/5/30
224ページ
※この本はオンデマンドで作成・印刷されています。
■多様な働き方とマネジャーの負担感
2000年頃までの日本の会社組織では「新卒入社の正社員のみ」というメンバー構成がほとんどでした。しかし、最近は、新卒一括採用に加え、通年採用や新卒でのジョブ型採用が加わり、中途採用も増え、社外での副業が認められるなど、雇用慣行と働き方の多様性を認める社会の変化がみられます。
■3つのMの喪失
職場で、上司や同僚などのモデルから様々なことを自然と学ぶモデリング(Modeling)。
観察(モニター)することで、新人や異動者に対して、先輩やマネジャーが本人の仕事の様子を観て、適宜、必要なことを教えて習得させるOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)の要素を含むモニタリング(Monitoring)。
年長や仕事経験の豊富な熟達者(メンター)が、年下や未熟な者(メンティ)に行う、学びの支援のメンタリング(Mentoring)。
これらの頭文字から「3つのMと呼んでいます。働き方や働く人の就業観、組織構造の変化、多様な雇用形態や人事制度、などの変化によって失われつつあると考えられます。
■リテラシーとコンピテンシー
PROGでは、ビジネスパーソンのジェネリックスキルを「リテラシー」と「コンピテンシー」の2側面で把握します。
リテラシーは、知識を活用して、問題解決にあたる力のことを示します。また、仕事上で生じる様々な問題解決の場面において、筋道を立て、偏りなく、合理的に思考する力を示します。
コンピテンシーは実践的な問題解決をする力、仕事で成果をあげる力のことを示します。いずれも、どのような仕事にも転移可能な力のことを示します。
■職務遂行能力の氷山モデル
PROGは、マネジャーとメンバーそれぞれが持つニーズを満たし、かつ、両者の共通言語にもなるツールとして設計されています。
そのなかで、コンピテンシーを「人と自分にベストな状態をもたらすために周囲に働きかける力」と定義しています。経験を通して身に付いた行動特性ですが、行動だけではなく、行動を左右する考え方やパーソナリティなど、表面上は見えにくいものに影響されるため、見える化(可視化)しにくいという特性があります。PROGは工夫を凝らしており、この特性を測るツールとしても有効です。
■基礎力スキルチェック
本書では自己評価でコンピテンシーレベルを判定できるワークを収録しています。
実際のPROGの設問や判定方法とは全く異なりますが、ジェネリックスキルの理解と「(1) 日常場面と行動の背景にある意識・考え方を考える(2) 強みを自覚する(3) 自己評価のクセを知る」という3点を把握するのに非常に役に立ちます。
■Will Can Must フレームで考える
Will Can Mustフレームとは「ビジョン・やりたいこと・実現したいこと(Will)」「現在持っている、発揮している強み(Can)」「会社から期待される役割や責任(Must)」を軸とした考え方のことです。
キャリアマネジメント支援では、このフレームを使いながら、現状把握と課題の明確化を行い、今後のキャリアマネジメントのターゲットや取り組むべき課題を明確にしていくことができます。
こうした「問い」に対して、考える→書き出す→話すことで、自己理解が深まる、異なる視野視点でものを見ることができるようになるのは、コーチングやカウンセリングの効果・効用と同じものが期待されます。
■著者について
◎平田史昭(ひらた・ふみあき)
株式会社リアセック取締役 COO。同社キャリア総合研究所主幹研究員。株式会社ピック アンドミックス取締役。北海道生まれ。1988年横浜国立大学経済学部卒。株式会社リク ルートにて、企業向け人材採用、教育研修、人事コンサルティングを担当した後、1999 年 GCDF キャリアカウンセラートレーニングプログラムを開発、キャリア開発支援サー ビスの事業化に従事。2006年株式会社リアセック設立。専門はキャリア開発、キャリア カウンセリング。
●主な著書
『メンタリング入門』共著(日経文庫 ) 『オーガニゼーショナル・カウンセリング序説』共著(ナカニシヤ出版) 『新キャリア開発支援論 -AI 時代のキャリア自律に向けて』共著(学事出版)
◎松村直樹(まつむら・なおき)
株式会社ピックアンドミックス代表取締役、株式会社リアセック取締役。同社キャリア 総合研究所主幹研究員。石川県生まれ。1988年筑波大学大学院環境科学研究科修了。株 式会社リクルートにて、求人情報誌の企画、事業部・関連会社の統合・再編、新規事業の 企画・立案などの業務を担当した後、1997年キャリアアセスメント R-CAP を開発、キャ リア教育の事業化に従事。2006年株式会社リアセック設立。専門はキャリアアセスメン ト、キャリア教育。
●主な著書・論文
『新キャリア開発支援論 -AI 時代のキャリア自律に向けて』共著 ( 学事出版 ) 『学修成果の可視化と内部質保証 - 日本型 IR の課題』共著 ( 玉川大学出版部 ) 『 PROG 白書2021- 大学教育とキャリアの繋がりを解明』共著 ( 学事出版 )
[会社紹介]
株式会社ピックアンドミックス 2019年11月 キャリア開発に関連するテスト、教材・教育研修プログラムの研究、企画開 発のため、河合塾グループ株式会社 KJ ホールディングスと株式会社リアセックが共同設立。