豊島与志雄は、「レ・ミゼラブル」の翻訳によって、創作家よりは、翻訳家としての一面がよく知られていますが、その翻訳は名訳として未だに読まれ続けています。 彼のもう一つの顔は、児童文学の名手であり、沢山の童話を書き残しています。彼は四十歳で妻を無くしたあと、残された幼ない子ども3人のために、せっせと幾つもの童話を作っていた時期がありました。その作品の数々に共通するのは、幼児期に受けた郷土の雰囲気や、沢山の昔話を語り聞かせてくれた祖母から受けた影響が感じられるものです。 どこか懐かしく、そしてあたたかい、豊島童話の世界に親子で触れてみませんか? 「夢の卵」 遠い昔のこと、インドに若く美しい王子がいました。王子は夜眠ってから、夢を見るのが大好きで、翌朝になると夢の話を皆に話して聞かせるのでした。 しかし、夢の話ばかりする王子を心配した王様は、「夢は、みな不確かな嘘ばかりで、眼がさめると消えてなくなるではないか」 と言って、学問に励むよう言うのでした。この言葉に納得できない王子は、夢も学問と同様に本当のことだと証明するために、夢を捕まえてやろうと息巻くのでしたが…… 「コーカサスの禿鷹」 コーカサスに一匹の大きな禿鷹がいました。仲間の者たちと一緒に高い山の頂に住んでいましたが、ある日ふと、こう考えたのです。 「自分は仲間の誰よりも、体が大きく、力が強く、知恵もあるので、みんなから尊敬されている。そこで一つ奮発して、みんなよりも立派な住居をこしらえて、王様然と構えこんでいなくちゃなるまい」 そして、彼はこの国中で一番高い山の頂に立派な岩屋を探してそこに住もうとしましたが、どれが一番高い山か、見当がつかずにいました。そこで国中の山の霊たちに聞いて回ったものの、皆「俺だ」と言うのでわかりません。そこで禿鷹は山の神の知恵を借りようとするのですが…… <仕様> オーディオブックCD ■品番:9784775985342 ■JAN:9784775985342 ■発売元:でじじ発行/パンローリング発売 ■発売日:2018.03.17 |