雲助おぼえ帳 / 朝日新聞社

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「師匠! 人間国宝がここまで喋っていいんですか!?」落語界4人目の人間国宝(重要無形文化財保持者)となった五街道雲助.滑稽噺から芝居噺まで,多彩な高座で客席を魅了する師匠が,評論家・長井好弘氏を聞き手に,持ちネタを解説します.その噺のポイントはどこか,どんな工夫を行い,本番でどう感じたか.初出しのエピソ-ドも満載.師匠・金原亭馬生の思い出,弟子たちとの交流,そして落語論も.本文の一部をご紹介します.●火焔太鼓(かえんだいこ)長井 雲助師匠は演者として『火焔太鼓』についてどう思っていますか? 雲助 やっぱり,お客を見るというか.長井 観客を見る?雲助 ちょっと硬いお客さんの時だと,この噺をやるのは怖いです.だから,たとえば寄席で十日間,ずっと『火焔太鼓』でトリを取ってくれと言ったら,かなり苦痛でしょうね.長井 どうして怖いのですか?雲助 必ずウケるとは限らない.どこかで一つ滑ったら(ウケなかったら),回復できずに最後までスベって終わるような,そういう怖さがあるんですよ.だから,普通の落語会のトリで,『火焔太鼓』のネタ出しなんてェのも,ちょっと遠慮したい.長井 お客さんの様子を見て,「あ,これだったら今日は大丈夫かな」と思ったら高座にかける,という感じですか?雲助 そういうことです.●芝浜(しばはま)長井 志ん生,志ん朝ラインは割と軽めの『芝浜』でしたね.雲助 もう完全に落とし噺の『芝浜』ですよ.サゲの「また夢になるといけねえ」っていうのも落とし噺のサゲの言い方をしてますね.このサゲが難しいのは,「なぜ夢になるといけないのか」ということなんです.普通は「あ,また夢になって,かみさんに騙されるといけないから」とか,だいたいそんな感覚でのサゲの言い方ですよね.長井 師匠のサゲは一味違いますね.雲助 あたしのは,とにかく勝五郎が幸福の絶頂にある.せっかくこんなありがたいことがあるのに,これが夢になっちゃあいけないから,「また夢になるといけねえや」という落とし方にするんですね.長井 勝五郎の至福の思いをちゃんと盛り上げておかないと,その台詞が生きてこないという.雲助 そうですね.だから,あたしは女房が身籠っているという設定にしています.幸せの要素を積み重ねるには,子供ができたというのはかなり大きい.子供ができる,お酒が飲める,お金が戻ってくる.それで,除夜の鐘が聞こえて,年が明ける.「ああ,おめでとうよ」という絶頂感の根底に「子供ができる」というのがあるというのがいいなあという気がします.「子供ができた? じゃあ祝いに酒を」という口実もできるしね.●鰍沢(かじかざわ)長井 『鰍沢』は雲助師匠の工夫がいっぱい詰まった,いわば雲助一門の代表的な噺ですから,この形を何とか残してほしいなと思います.総領弟子はやらないと思うけど(笑).雲助 白酒はやらないでしょうね(笑).馬石も,やらねえかな.最近は,龍玉がよくやっているらしいけど.実は『鰍沢』って,ずいぶん稽古頼まれてるんですよ.それが,ほとんど女性の噺家なの(笑).長井 へえ-,そうなんですか.雲助 お熊をやりたいという


・五街道雲助
・版型:四六判
・総ペ-ジ数:400
・ISBNコ-ド:9784022520647
・出版年月日:2025/06/20