小さな物語のような珠玉の旅エッセイ
《考えてみれば贅沢で無謀な旅だった.帰る日も決めず(お金の続く限りいようと思っていた),泊る場所も決めず(いきあたりばったりの旅こそ私たちの憧れだった),言葉もできず,でもともかく可能な限りいろいろな乗り物に乗り,可能な限り遠まわりをして,アフリカ大陸に行こうとしていた./私とその友人は,十三歳のときに女子高で出会った.どちらも本が好きで外国に憧れていて,ドラマティックなことが好きでおいしいものが好きで,すぐに意気投合した.ト-マス・クックの時刻表は私たちの宝物だった.ひろげて部屋の壁に貼り,「壁のその部分だけ外国みたいだ」と思っていた(「ト-マス・クックとドモドッソラ」より).
これは,二十歳の頃のヨ-ロッパ旅行の思い出.
海外への旅(パリ,ロ-マ,フランクフルト・・・・・・ロシアとアフリカ),そして国内の旅.でも,初めて入るデパ-トの食品売り場にも,一冊の本の中にも旅はある.
小さな物語のような珠玉のエッセイ37篇のほかに,旅をめぐる三篇の詩も収録した心に沁みわたる一冊.
・江國 香織
・版型:文庫型
・総ペ-ジ数:176
・ISBNコ-ド:9784094071863
・出版年月日:2022/10/06