死んでしまったあと、モノになって大切な人の近くにいられるとしたら・・・・・・。あなたは何になりますか? 亡くなった人に、「とりつくしま係」が問いかける。この世に未練はありませんか。あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ、と。日記になって妻の日常を見守る夫。野球で使うロージンバックになって、ピッチャーの息子の試合を見届ける母・・・・・・。すでに失われた人生が凝縮してフラッシュバックのように現れ、切なさと温かさと哀しみ、そして少しのおかしみが滲み出る短篇小説集。5分に1回キュンとしたりじーんとしたり。短く美しい言葉で紡がれた魔法のような11話。好きな人に会えずに淋しくてしかたがないとき、仕事や家事に疲れてため息をもらしちゃったとき、大切な人と喧嘩をしてやるせなくなってしまったとき、この物語に救われるかもしれません。
【11のとりつくしま】
●ピッチャーの息子を見守るため、野球の試合で使うロージンバックになった母
●夫のお気に入りのマグカップになった妻
●いつも遊んでいた大好きなジャングルジムになった男の子
●敬愛する書道の先生の扇子になった女性
●ひそかに見ていた図書館司書の名札になった老人
●母の補聴器になった娘
●妻が綴る日記になった夫
●最後の大きな買い物だったマッサージ器になった父親
●憧れの先輩が使うリップクリームになった少女
●孫にねだられたカメラになった祖母
●髪の毛を一本、裏庭のびわの樹の下に埋めて欲しいという一人娘
・東直子
・版型:文庫型
・ISBNコード:9784480428295
・出版年月日:2017/06/02