遠野物語 (新潮文庫)
オクナイサマ、オシラサマ、ザシキワラシ……。 日本民俗学を成立させた記念碑的名著。山本健吉、吉本隆明、三島由紀夫の三氏による解説を収録。 日本民俗学のメッカ遠野郷は現在の岩手県遠野市周辺にあたる。その遠野地方に、今なお語り伝えられている民間信仰や異聞怪談の数々。山の神、山女、雪女、天狗、川童(かっぱ)、オシラサマ、オクナイサマ、ザシキワラシ……。これらを採集整理し、流麗な文体で綴った本書は、柳田国男の愛と情熱が行間にあふれる民俗洞察の名著である。山本健吉、吉本隆明、三島由紀夫の三氏による解説を収録。 【目次】 遠野物語 解説:山本健吉 『遠野物語』の意味:吉本隆明 小説とは何か:三島由紀夫 年譜 索引 【本文冒頭より】 此(この)話はすべて遠野の人佐々木鏡石君より聞きたり。昨明治四十二年の二月頃より始めて夜分折々訪ね来り此話をせられしを筆記せしなり。鏡石君は話上手には非(あら)ざれども誠実なる人なり。自分も亦(また)一字一句をも加減せず感じたるまゝを書きたり。思ふに遠野郷には比類の物語猶(なお)数百件あるらん。我々はより多くを聞かんことを切望す。国内の山村にして遠野より更に物