あれは忘れもしない 2005年全豪オープン
2回戦、ある日本人選手の活躍に、観客席は騒然となりました。
その日本人の名は『鈴木貴男』。
当時の鈴木プロは世界ランク200番にも手が届かない
選手でしたが、何度もデビスカップで日本を救ってきた
第一人者です。
2005年全豪オープン2回戦、相手はテニス史上最高の選手
と言われたRフェデラー。
試合が始まってわずか数十秒後。
観客も解説者も自分の目を疑いました。
鈴木プロは序盤から、王者フェデラーのサービスをブレーク。
正確で速いサーブ、ミドルコートでの動き、
華麗なサーブ&ボレー、そして地面を這うような
超低空スライス!
全豪オープンで、冷静沈着な王者フェデラーが、
コート上でいらだち、雄叫びをあげたのです。
「抜くか、抜かれるか。」というスピーディな展開に、
観客もいつしか心を奪われ、鈴木プロを応援しはじめました。
フェデラーも鈴木プロの動きをみて、この試合がイージーでは
ないことを即座に理解したようです。
ブレイクバックして「カモン!」と叫ぶフェデラー。
彼の表情は一変し、声を出し、鈴木プロのプレイに
対応しようと必死に動き続けました。
日本人が全豪のナイトセッションで、あのフェデラーを相手に
サーブ&ボレーで翻弄するなんて…。
結果は3-6、4-6、4-6 で鈴木プロは負けてしまいましたが、
フェデラーは試合の後、
「まだ興奮していて、英語が上手く話せない。」
「もう一度、彼と試合がしたい。」
と、この試合の感想を述べました。
しかし、なぜ、鈴木プロは、サーブ&ボレーのプレースタイル
のままで、現代テニスの象徴ともいえるフェデラーと対等に
競り合うことができたのでしょうか?
その理由について鈴木プロ本人に聞くと、意外な答えが返ってきました。
それは、『スライス』です。
たとえば、鈴木プロがフェデラーと対戦した時、意図的にバックの
スライスを使う場面が多く見られました。
この戦術は、ナダルとの対戦でフェデラー自身も使う戦術で、
相手に高い打点で打たせないメリットがあり、スピンでの攻撃力が
高い相手に対して有効です。
つまり…
「ぐりぐりスピンで高い打点で叩きこむ」のが現代テニスだとすれば
そのテニスを封じ込める鍵となるショットがスライスなのです。
さあ、フェデラーを苦しめた鈴木プロの
「地を這うように滑り、手元で伸びるようなスライス」の打ち方を
お伝えしましょう。