城下町のこだわり
村上の「塩引鮭(塩引き鮭)」は特徴的な形態をしており、「腹の中程で一ヶ所包丁を止めて完全に開かずに繋げた裂き方」は「切腹」連想させるものを嫌っての事と言われています。
通常魚を干す場合はウロコの向きに逆らわずに水が落ちるよう、頭を上に吊るすのが一般的です。村上流の「頭を下にした吊し方」は「首吊り」を嫌ってとも、城下町の村上では鮭でさえも殿様に頭を高くできなかったとも言われています。鮭の増殖に多大なる貢献を果した藩士への敬意であり、城下町村上ならではのこだわりと言えます。
村上では昔から塩引鮭(塩引き鮭)を大晦日の年取り魚として食べてきました。特に一鰭(いちびれ)=胸ビレ周辺部は年神様を迎えるため神棚に供えた後、家長の膳にのるしきたりがあります。一鰭は鮭一尾から2切れしかとれない貴重品で、「頭を下にした吊し方」は胸ビレ周辺部に旨味を集めるためという説もあります。
村上では冬になると各々の家で塩引鮭(塩引き鮭)をつくっていました。そしてこれは「家長」の仕事で各々その仕上がりの良さを競っていました。今では塩引鮭(塩引き鮭)をつくる家も減っていますが、それぞれが自分の流儀にこだわり、味も姿かたちもよいものを求めてつくっています。