カスタムモデルながら二枚取りゴールドブラス製薄肉ベルを搭載することで、軽めの抵抗感と柔らかくて太い音色を実現しています。
ロータリーとレバー連結にダブルボールベアリング方式の採用により、滑らかで確実なF管レバー操作を実現しています。またレバー形状もシンプルかつフィット感のあるデザインとなっています。
主管およびF管本体外管リングを省略、軽量化された作りによって楽器の反応性が向上しています。
軽快なスライドワークのために、スライド外管補強管およびスライド継手部L字補強パーツの省略、スライド外管支柱をスリム化することにより軽量化を行いました。また、新規設計の薄肉化したリードパイプは軽やかな吹奏感のキーポイントとなっています。
テナーバストロンボーンでは初めてブラックカラーのケースを採用しており、ステッチ部分にはこだわりのパープルを配色、ゴールドラッチとともに高級感を演出しています。
太管との出会いは25年前にまでさかのぼる。太管を使い出してまもない頃、ジャズでは細管クラシックは太管と吹き分けていた。
大きな楽器を操る方法をまだまだわかっていなかったこともあり、当時ヤマハのアトリエに行っては細管のような吹き心地を求めて、様々な改造をしていた。
それから20年、録音などでは8割以上太管を使用していたこともあり、自分が演奏する全ての音楽で太管を使ってみようと思い、クラシックからビッグバンドのセクション、ロックやポップス、あらゆるジャンルで太管を使えるようにするために、試行錯誤しながら試作を繰り返した。
そしてついに完成したこのYSL-823Gは、イメージする音の全てを叶えてくれる楽器へと成長した。
ヘビータイプのアメリカンな楽器が流行ったり、ヨーロッパ仕様の楽器など時代によって様々な流行りはあるかもしれない。
しかし、私が楽器に求めるものとは音色のグラデーションが多いこと。小さな音から大きな音だけではなく、小さな音の音色がすること、そして大きな音の音色がすること。言葉で伝えるのは難しいが、あえていうなら大きな音で小さな音の音色を演奏し、小さな音で大きな音色がする。これは例えば生音でホールを鳴らした時が一番わかりやすい。ホールから返ってくる残響には自分がその直前に吹いた音が直接耳に届く。この時にイメージ通りで返ってくる楽器は理想的だと思う。
YSL-823Gを演奏すると、そのイメージ通りの音色が返ってくるからコントロールがしやすい。 実際に見てもらうとわかるのだが、この楽器は非常にシンプルな作りになっている。スライドの補強管もなければ、チューニング管のリングもない。これは全てバランスを考えてこのようになっている。二枚取りの薄く軽い赤ベルと、他のほぼ全てのパーツはイエローブラス。このコンビネーションは日本の素材に於いては重要なことだと思っている。楽器に求められる音色のグラデーションを無段階に表現できるのはこのイエローブラスだと思うので、この楽器にはあえて洋白の部分がない(インナースライドは強度の問題で洋白)。こうやって、試行錯誤してできたYSL-823Gはジャズやクラシック、全てのジャンルにフィットする音色を出すことのできる、無限の可能性を持ったトロンボーンだと自負できる。
中川 英二郎
YSL-823G | ||
---|---|---|
本体 | 仕上げ | ゴールドラッカー |
ベル | ベル直径 | 214mm(214mm(8 1/2'') |
ボア | ボアサイズ | 太管13.89mm |
F管レバー方式 | ボール式 | |
調子 | B♭/F | |
スライド | 外管/内管材質 | イエローブラス/洋白 |
ベル材質/加工法 | ゴールドブラス/二枚取り | |
付属品 | ケース | SLC-823G |
付属マウスピース | SL-48L |