A.R.E. [Acoustic Resonance Enhancement]とは、ヤマハが独自に研究・開発した木材改質技術です。ギターのボディ材にこの技術を施すことで、長年弾き込まれたような豊かな鳴りを実現します。薬品類を一切使わず、温度、湿度、気圧を高精度に制御することにより、製材後長期間を経た木材の経年変化と同様の変化を短期間で生みだすことによって音の伝達と振動効率を上げ、中低音成分の伸びの促進と高音成分の立ち上がりの増大や減衰の高速化を実現します。このため、バランスが良く耳障りな倍音成分の少ない、熟成された温かみのあるサウンドが得られます。今回のモデルチェンジを機に、従来は手工モデルのみに採用していた「A.R.E.」を、全モデルに採用しました。
掲載のグラフは、A.R.E.処理を施していないLシリーズと、A.R.E.搭載のNew Lシリーズを一定の条件下において発音させた、音響スペクトルの実測グラフィックデータです。
A.R.E.搭載のギターにおいて、低域のサステインが増大し、高域のアタック感が良くなっていることが見てとれます。またアタックの後、耳障りな高域成分がより短時間で減衰していることも明らかです。A.R.E.で狙った音響特性変化が数値的にも裏付けられていると考えられます。実際の演奏においても、多くのミュージシャンから高い評価を得ています。その評価は総じて、長年弾き込まれたギターの良さに共通するものです。つまり、「落ち着いた」-「熟成された」-「暖かい」-「(箱)鳴りの良い」-「(音の)粒立ちが良い」といった評価を多く戴いています。
「Lシリーズ」で採用してきたノンスキャロップ・Xブレイシング構造を、最新の解析・モデリング技術と熟練のクラフトマンシップによりさらに改良しました。木の自然な鳴りを最大限に引き出し、より深く、豊潤な中低音を実現。
弦間ピッチと弦高、指板バインディングやネックテーパー等細部に亘り改良を実施。ギタリストによりフィットする新しいネック形状が誕生しました。新デザインのネックでは、ハイポジションからローポジションまで、安定したグリップ感と滑らかな演奏性をお届けします。また、従来カスタムモデルで採用していたネック・ボディ接合部の形状を、「L36シリーズ」「L26シリーズ」にも採用しました。接合面積を拡大し音の振動伝達効率を高め、より深いサステインを獲得しました。 順反り・逆反りの両方向に力が効くダブルアクショントラスロッドを全モデルで採用。より精度の高いネック調整が可能です。
マホガニーとローズウッドによる5層構造ネックを搭載。「L26シリーズ」、「L36シリーズ」及び「L56 Customシリーズ」「LL86 Custom」では、ヘッド裏側にローズウッドの化粧板とボリュート加工を施し、ヘッド部の強化を実現しました。5層構造ネックは反り、ねじれが発生しにくく安定したネックコンディションを保ちます。
LLボディはヤマハの伝統的なボディスタイル。その豊かな音量、ワイドなダイナミックスレンジ、完璧なトーンバランスが特長です。美しく、透き通ったサウンドは、世界中のアーティストにより洗練され完成しました。
ラッカー塗装は、熟練した技術者によって、慎重に、何層にもわたって施されます。この仕上げによって、木材の持つ振動伝達力が生かされ、素早い音の立ち上がりと豊かな響きを実現しました。極上のサウンドを引き出すため、特別に配合されたラッカー塗装は、「LL86 Custom」及び「L56 Customシリーズ」および「L36シリーズ」で採用しています。
「L26シリーズ」以上のモデルには、サウンドホール近くにスクエア・フレーム構造を採用。表板と裏板のブレイスをつなぐサイドブレイスを追加することで、弦振動をより確実に裏板に伝えます。これによって、優れたレスポンスと力強い響きを生み出し、低音の鳴りを体感することができます。