イスラム芸術の幾何学:天上の図形を描く (アルケミスト双書)

均整のとれた天上の模様 神の似姿の表現を冒涜として禁じたイスラム教は、 神の「みわざ」をこの世で表現するものとして、精妙な幾何学模様を選びとった。 平面をシンメトリカルに分割し、複雑に織りなすデザインを作り出すことで、 無限や森羅万象のゆるぎない中心という概念を豊かに作り出したのだ。 そのあまりの複雑さにめまいするイスラムの幾何学模様だが、 著者はいくつかの幾何学的原則を知っていれば、 だれもがやすやすと描けることを明らかにする。 「はじめに」より 宗教美術の役割は、その場を訪れた人々の霊的生活を支え、世界をどう理解すればよいか、世界の背後にある捉えにくい現実をどう把握すればよいかを教えることにある。伝統を担う職人たちは、いかにして物質を使って霊的世界を表現するかという課題に立ち向かう。世界中の壮麗な寺院、教会、モスクは、ただその目的のために傾注された努力の遺産であり、どれもそれぞれの宗教の霊的視点によって形づくられている。 イスラム世界の美術工芸は、その長い歴史を通じて、さまざまな媒体で多彩な様式を発展させてきた。しかしそこには常に、一目でイスラム美術とわかる統一要素があった。