特攻隊員だった父の遺したもの

著者:松浦 寛【著】
出版社:高文研

商品説明

内容説明

たくさんカネを持っている者が偉いんじゃない。心がきれいで、困っている人を助ける者が世の中で一番偉いんじゃ。生まれたばかりの我が子に繰り返した父の言葉は、「今だけ、金だけ、自分だけ」の荒廃した日本社会を今も照らしつづけている。



目次

第1部 特攻隊員だった父(予科練に志願した父;自活しながら大阪外語大学へ;就職と結婚―戦後一〇年ようやくつかんだ「心の平安」;反時代的な父の教育方針)
第2部 特攻隊員だった父の遺したもの(杉原千畝と歴史修正主義;リベラルと保守の間で宙づり―私の思想遍歴;ヨーロッパ人文主義の後衛として;知と行の一致;知識人の役割とは何か;パリからインドネシアへ;学問と信仰;今だけ、金だけ、自分だけ―新自由主義がもたらしたもの)



著者等紹介

松浦寛[マツウラヒロシ]
1956年、愛媛県松山市生まれ。上智大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学(フランス文学・思想専攻)。上智大学講師。ファシズムと反ユダヤ主義、差別や偏見の問題に詳しい(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



出版社内容情報

「正しい人間になれ」

「たくさんカネを持っている者が偉いんじゃない。心がきれいで、困っている人を助ける者が世の中で一番偉いんじゃ」

上の言葉は、17歳で予科練航空隊に入隊して特攻隊員となった父が、戦後10年を経て生まれた我が子に繰り返し語った言葉です。
大日本帝国の敗戦により、「戦争の大義」が嘘っぱちであったことを知り、米軍機の空爆による戦友の無惨な死が脳裏に焼き付き、生き残った後ろめたさにさいなまれた著者の父は、心の中に大きな虚無を抱えて生きなければなりませんでした。

「俺が軍隊で経験した気持ちは信念でも何でもない狂的心理だ」

「戦争が終わってからこの方、一体俺は心の底から笑った事があるだろうか」

と日記に書き記した元特攻隊員は、家族を得てようやく心の平穏を取り戻しました。
「正しい人間とは何か」「正しい行いとは何か」──父の期待・願いを受け止めた著者はフランス文学・思想の研究者として学問の道に進みます。また、同じキリスト者として、ナチス・ドイツから逃れてきたユダヤ人を助けた杉原千畝に深い関心を持ち、1990年代後半に台頭した歴史修正主義勢力と対峙します。
「戦争は結局、いかなる理由をつけても『悪』だ。一人の幸福のために、一国の利益のために、他人を痛め、他の国を侵すことは悪いことだ」と我が子を諭した言葉は、「今だけ、金だけ、自分だけ」の 荒廃した日本社会を照らす一筋の光となっています。
 戦争の記憶をどう受け継いでいくか?──父から子へ託された言葉を収めた本書は、戦争未体験世代がマジョリティーとなった今、1つの指針を指し示しています。




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