商品説明内容説明
松尾芭蕉十傑の一人・各務支考に見出された千代女。伊勢派俳壇の中心人物・乙由とのロマンスや芭蕉と弟子たちの人間模様が鮮やかに甦る。太宰治の短編「千代女」にも取り上げられた波乱の人生を描く歴史物語。
目次
第1部 朝顔や―「ほととぎすほととぎす…」と
第2部 釣瓶とられて―乙由へのほのかな愛と別れ…
第3部 もらひ水―朝鮮通信使への21句と『老足の拾ひわらじ』
出版社内容情報
今、甦る江戸期の花の俳人。「女芭蕉」と称され、朝鮮通信使に21句を贈物した歴史的女性の生涯!芭蕉十傑の一人・各務支考に見出され、代表作「朝顔や つるべ取られて もらい水」などを詠んだ女流俳人、千代女の軌跡。
今、甦る江戸期の花の俳人。「女芭蕉」と称され、朝鮮通信使に21句を贈物した歴史的女性の生涯!
松尾芭蕉十傑の一人・各務支考に見出され千代女(1703-1775)。代表作「朝顔や つるべ取られて もらい水」「月も見て 我はこの世を かしく哉」などを詠んだ女流俳人の軌跡。伊勢派俳壇の中心人物・乙由とのロマンスや芭蕉と弟子たちの人間模様が鮮やかに甦る。晩年には与謝蕪村の句集『玉藻集』の序文も手がけている。太宰治の短編や落語の三代目桂三木助の「加賀の千代」に取り上げられた千代女の知られざる人生を描く歴史物語。
「…むかし加賀の千代女が、はじめてお師匠さんのところへ俳句を教わりに行った時、まず、ほととぎすという題で作って見よと言われ、早速さまざま作ってお師匠さんにお見せしたのだが、お師匠さんは、これでよろしいとはおっしゃらなかった、それでね、千代女は一晩ねむらずに考えて、ふと気が附いたら夜が明けていたので、何心なく、ほととぎす、ほととぎすとて明けにけり、と書いてお師匠さんにお見せしたら、千代女でかした! とはじめて褒められたそうじゃないか、何事にも根気が必要です、と言ってお茶を一と口のんで、こんどは低い声で、ほととぎす、ほととぎすとて明けにけり、と呟つぶやき、なるほどねえ、うまく作ったものだ、と自分でひとりで感心して居られます。お母さん、私は千代女ではありません。なんにも書けない低能の文学少女、炬燵にはいって雑誌を読んでいたら眠くなって来たので、炬燵は人間の眠り箱だと思った、という小説を一つ書いてお見せしたら、叔父さんは中途で投げ出してしま
いました。…」(太宰治の短編『千代女』より)
清水 昭三[シミズ ショウゾウ]
山梨県韮崎市在住。著書に『芥川龍之介の夢』『椎名麟三の神と太宰治の神』(いずれも原書房)ほか。
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