内容説明
1990年代初頭、大人の日本語自然会話に適した文字化のルールが求められていた時期に、編者の宇佐美まゆみ氏が「人間の相互作用としてのコミュニケーション」の分析に適するように考案、提案した会話の記述方法が、『BTSJ』(基本的な文字化の原則(Basic Transcription System for Japanese:BTSJ))である。この『BTSJ』を用いて文字化した国立国語研究所の『BTSJ日本語自然会話コーパス(トランスクリプト・音声)2018年版』とその前身の一連のコーパスは、「語用論的分析」及び「人間の相互作用の分析」の深化と発展を促すことを企図して構築された世界最大規模の「自然会話コーパス」である。本書では、語用論の中心的テーマである「共同発話文」「言い換え」「ターン交替」「ディスコース・マーカー」「スピーチレベル」「ポライトネス」などの分析が、『BTSJ』という文字化・分析の記述方法を得ることによって、より科学的な語用論的分析へと進化し、深化を遂げている。語用論研究の新境地を開くとともに、日本語教育への応用にも直結させた、まさに待望の一冊である。
目次
語用論的分析に適した『基本的な文字化の原則(BTSJ)』開発の背景とその特徴
『基本的な文字化の原則(BTSJ)2019年改訂版』
ディスコース・ポライトネス理論から見た共同発話文:ディスコース・ポライトネス理論が言語教育に示唆すること
初対面雑談場面における否定応答詞と否定応答表現:対話相手との年齢差に着目して
接触場面と母語場面における母語話者の「言い換え」:日常的な接触経験と対話相手の日本語レベルの観点から
日本語教育のための会話のターン交替とその語用論的特徴の分析
ディスコース・ポライトネス理論に基づいた日中対照研究の方法と実践:BTSコーパスを利用して
ディスコース・ポライトネス理論から見る親疎関係によるポライトネスの日中対照研究:語彙の丁寧度を中心に
日本語会話物語の類型:対人的機能による分類
「だから」の語用論的分析は、いかに日本語教育に生かせるか
自然なコミュニケーションの特徴は、会話教育にいかに生かせるか
著者等紹介
宇佐美まゆみ[ウサミマユミ]
東京外国語大学大学院教授を経て、2016年度より、国立国語研究所教授。慶應義塾大学大学院社会学研究科心理学専攻修了(文学修士)、ハーバード大学教育学大学院人間発達・心理学科修了(教育学修士(Ed.M)、教育学博士(Ed.D))(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)