商品説明内容説明
欧米では、政策の強力な牽引力で再生可能エネルギーが導入されている。しかし日本では遅々として進まない。既存事業者の政治的経済的利害ももちろんあるが、そもそも日本で流通する情報には、誤解や不完全なものが多い。系統安定化問題、FIT(固定価格買取制度)の有効性、発電コスト、自治体の主体性や合意形成問題など、日本では否定的な材料として語られる諸論点に、欧米の事例を具体的に示すことで反証し、日本の策的積極性を求める。環境経済と再生可能エネルギー論でわが国をリードする研究者、政策推進者、実務家が一堂に会した最新の政策論。
目次
第1部 欧米諸国の再生可能エネルギー政策(世界の温暖化対策と再エネ政策を概観する;ドイツの再生可能エネルギー推進策の現状と方向;イギリスの再生可能エネルギー政策;再生可能資源国家・アイスランドの緑化熱電戦略による応戦;米国の再生可能エネルギーの導入状況と開発促進政策)
第2部 再生可能エネルギーの課題と論点(系統連系問題;日本の再生可能エネルギー政策の評価と課題―再生可能エネルギー固定価格買取制度の改正をふまえて;発電コスト分析から見えてくるもの;自治体と分散型電源;再生可能エネルギーの社会受容性と制度設計;日本の再エネ政策と本書の関わり)
著者等紹介
植田和弘[ウエタカズヒロ]
1952年生まれ。京都大学大学院経済学研究科教授。経済学博士。工学博士。専門は環境経済学。環境問題を通じて工学から経済学へ。大阪府市エネルギー戦略会議会長、コスト等検証委員会委員を務めた
山家公雄[ヤマカキミオ]
1956年生まれ。京都大学大学院経済学研究科特任教授。エネルギー戦略研究所所長、東北公益文科大学特任教授、山形県総合エネルギーアドバイザー、豊田合成(株)取締役を務める。東京大学経済学部卒業。日本政策投資銀行エネルギー部次長、調査部審議役等を経て現職。第27回エネルギーフォーラム賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
欧米では,政策の強力な牽引力で再生可能エネルギーが導入されている。しかし日本では遅々として進まない。既存事業者の政治的経済的利害ももちろんあるが,そもそも日本で流通する情報には,誤解や不完全なものが多い。系統安定化問題,FIT(固定価格買取制度)の有効性,発電コスト,自治体の主体性や合意形成問題など,日本ではネガティブな材料として語られる諸論点に,欧米の事例を具体的に示すことで反証し,日本の政策的積極性を求める。環境経済と再生可能エネルギー論でわが国をリードする研究者,政策推進者,実務家が一堂に会した最新の政策論。
はじめに [山家公雄]
第?部 欧米諸国の再生可能エネルギー政策
第1章 世界の温暖化対策と再エネ政策を概観する [内藤克彦]?
1?1 欧州等の温暖化対策の出発点
1?2 欧・米・日のエネルギー起源温室効果ガス排出の推移にみる発電部門の位置づけ
1?3 欧州の温暖化対策における再エネの位置づけ
1 Energy Road Map 2050
2 目標達成のための障害と解決策
1?4 デンマークの事例
1 国情
2 エネルギーの構造
3 デンマークの温室効果ガスの排出推移
4 政策と今後の削減目標
5 温暖化対策の中でのエネルギー分野のシェア
第2章 ドイツの再生可能エネルギー推進策の現状と方向 [山家公雄]
2?1 再生可能エネルギー大国ドイツの軌跡と普及要因
2?2 2014年再エネ法改正の検証―固定価格買い取り制度の精神は不変
1 EEG2014の印象と背景
2 「直接取引」の強化
3 入札制度の試験的実施
4 ブリージングキャップ制度の拡張
5 賦課金適用ベースの拡大
6 2014年改正の検証
7 補論 EEG2016案の概要
第3章 イギリスの再生可能エネルギー政策 [長山浩章]
3?1 英国における再生可能エネルギーの現状
3?2 英国における電力セクター改革
1 英国における電源構成の現在と将来
2 英国における電力セクター改革と再生可能エネルギー導入促進策のこれまでの流れ
3?3 英国における再生可能エネルギーへの投資促進策
1 電源別投資促進策
2 再生可能エネルギーへの投資促進策
3 ROC(再生可能電力購入義務証書制度)
4 FIT
5 徴収調整フレームワーク
6 インバランス政策の変更の再生可能エネルギーに与える意味
7 大規模再エネプロジェクトへの投資契約
8 FIT-CfD
9 英国における新たな動き
第4章 再生可能資源国家・アイスランドの緑化熱電戦略による応戦 [加藤修一]
4?1 はじめに――再生可能資源国家・アイスランドの意思
4?2 EUエネルギー指令とアイスランドのエネルギー政策
1 EUエネルギー連合に見る戦略――「Road Map 2050」・「EESS」とアイスランドの対応
2 EU指令・決定とアイスランドのエネルギー政策
4?3 アイスランドのエネルギーの基本諸元と特色
1 第一次エネルギーと自給率――教訓となったオイルショック
2 アイスランドの再エネ政策――膨大な再生可能資源の潜在量と課題
4?4 アイスランドの再生可能エネルギーの特性と電熱展開
1 膨大な潜在量をもつアイスランドの再生可能エネルギー
2 永続的な地球の熱資源を活用する熱政策
3 大量で安価な電力と立地する多消費産業――再生可能資源の適正利用と威力
4 安価で安定した信頼できる電力――近隣EU諸国の産業・家庭用電気料金の価格
5 CO2の環境負荷が小さく高品質――低炭素社会の構築に寄与
4?5 IceLink事業による応戦――アイスランドの孤立系統の克服
1 再エネの最大導入に向けた国際連系線の強靭化戦略
2 アイスランドの大規模貯水池型水力発電の柔軟メカニズム――英国の安定装置
3 アイスランドと英国間の国際連系線等の電気料金価格の比較
4 IceLink事業に関する国民的議論と事業リスク等と提案
4?6 緑化電力による低炭素社会の構築――先導的な「モデル社会」による応戦
1 緑化電力と急速な脱炭素化
2 EUのHorizon 2020とアイスランドの水素社会への道
3 アイスランド仕様の誇るべき“現実”と太陽地球経済の端緒
4?7 FUKUSHIMAの後に
第5章 米国の再生可能エネルギーの導入状況と開発促進政策 [飯沼芳樹]
5?1 米国における再生可能エネルギーの位置付け
5?2 再生可能エネルギー促進策
1 PURPAのQF
2 再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)
3 多様な資金支援措置
4 ネットメータリング(NEM)
第?部 再生可能エネルギーの課題と論点
第6章 系統連系問題 [安田陽]
6?1 はじめに――世界と日本の情報ギャップ
6?2 系統連系問題の技術的考察
1 「バックアップ電源」と「柔軟性」
2 蓄電池は最初の選択肢ではない
3 出力予測技術と系統運用・市場設計との組み合わせ
6?3 系統連系問題の政策的課題
1 「原因者負担の原則」と「受益者負担の原則」
2 「ディープ方式」と「シャロー方式」
3 透明かつ非差別的なルール
4 再生可能エネルギーの「接続可能量」と接続制約
6?4 系統連系問題の市場的課題
1 メリットオーダー曲線とVREの優先給電
2 市場メカニズムによる系統運用
6?5 おわりに――不透明で差別的なルールの改善こそ
第7章 日本の再生可能エネルギー政策の評価と課題
――再生可能エネルギー固定価格買取制度の改正をふまえて [高村ゆかり]
7?1 日本における再生可能エネルギーの位置
7?2 FIT法改正の重要事項
1 認定制度の見直し
2 買取価格設定方法の変更
3 買取義務者の送配電事業者への変更
4 エネルギー多消費事業者に対する賦課金の減免制度の見直し
7?3 今回のFIT制度変更の評価
7?4 再エネのさらなる拡大のための課題
1 再エネ目標の引き上げと2030年をこえる再エネ長期目標の明確化
2 再エネの大規模導入を可能にする系統対策
3 再エネ需要の拡大
7?5 むすびにかえて
[コラム]固定価格買取制度(FIT)の設計に関する論点 [小川佑樹]
第8章 発電コスト分析から見えてくるもの [稲澤泉]
8?1 モデルプラント方式による発電コスト分析の概要
1 モデルプラント方式の概要
2 LCOEの役割
3 最新の発電コスト分析における前提条件と検証結果
8?2 電力市場の環境変化とLCOE計量手法の進化
1 電力市場の環境変化
2 LCOEの計量手法の進化
8?3 LCOEによる分析手法の評価と課題
1 評価
2 課題
3 今後の方向性
第9章 自治体と分散型電源 [中山琢夫]
9?1 なぜ,再公有化か
9?2 ドイツにおける都市公社新設の実態
1 新設された都市公社・村公社の場所とクラスター
2 新設された都市・村公社の自治体人口規模
3 新設都市・村公社の法人形態
4 都市・村公社新設の地域偏在性
5 新設都市・村公社の所有者
6 新設都市・村公社の設立年
9?3 再公有化の概念とその目標
第10章 再生可能エネルギーの社会受容性と制度設計 [尾形清一]?
10?1 再生可能エネルギー量的拡大に当たっての社会的制約条件
10?2 再生可能エネルギーと社会受容性
1 再エネの課題群と地域からの反発
2 陸上風力の問題――「NIMBY」or「PIMBY」
10?3 再エネの社会受容性に基づく政策と制度設計
1 再エネの社会受容性の理論と政策
2 再エネの長期的「便益」と立地地域のリスク
3 分配的正義に基づく事業と政策
4 地域資源を活かすための地方自治体の役割と条例制定
5 手続的正義に配慮したコミ
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