内容説明
暗い時代に生き、生の深淵からの叫びをうたった詩人の魂の軌跡。第一次世界大戦に向かう旧世界ヨーロッパの没落のただ中を生き、罪の意識に苦悩し、存在することの痛みをうたった詩人トラークル。言葉の音楽的な響き、独特な色彩にいろどられた幻覚、救済を求める絶望的な叫び。その作品と生涯を自在に行き来しながら、リルケやヴィトゲンシュタインを驚嘆させ、ハイデガーを深い哲学的思索に誘ったその詩作の真髄に迫る第一級の評伝。
目次
三和音で響く序
1 終局的な始まり―『一九〇九年集』
2 「酩酊の中でお前はすべてを理解する」―トラークルの有毒な創作
3 境界を越える試み―ウィーン・インスブルック・ヴェニス・ベルリンそれとも至る所がザルツブルクなのか
4 一九一三年『詩集』
5 詩的な色彩世界あるいは(詩の)「わたし」の問題
6 死に向かって詩作する。一つの自画像と「死んでいく者たちとの出会い」
7 『夢のなかのセバスティアン』あるいは「悪の変容」
8 「塀に沿って」。詩に描かれた世界の終末の様相
9 生まれぬもののなかで後生に生き続ける
著者等紹介
ゲルナー,リューディガー[ゲルナー,リューディガー] [G¨orner,R¨udiger]
1957年ロットヴァイル生まれ。ロンドン大学クイーン・メアリー・カレッジの近代ドイツ文学および文化史の教授
中村朝子[ナカムラアサコ]
上智大学大学院ドイツ文学専攻・博士前期課程修了。上智大学文学部ドイツ文学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)