内容説明
吉本隆明は詩人であり、詩を核心に抱いた思想家だ。詩や詩論のみならず、政治、哲学、宗教など、すべての知的冒険に、詩的な発想・想像・跳躍・切断が生き生きと働いている―。戦前・戦中における詩の“始まり”から、『固有時との対話』『転位のための十篇』をへて晩年の作品群まで、その生涯の詩を読み解く。六〇年代以降、同時代において吉本の詩と思想に全身で向きあってきた著者が、自身の数多くの吉本論を解体し、全篇を新たなかたちで構想した畢生の書。
目次
1 吉本隆明の詩と思想(最後の根本的問題―吉本隆明の死とその後;詩の“始まり”―『初期ノート』の世界;“神の死”以後の真昼の歌―思想詩人の誕生;反祈〓歌から反・反祈〓歌へ―「マチウ書試論」とそれ以後の展開;戦後詩論はどこで成立したか―詩人の戦争責任追及をめぐって;自立と螺旋―「試行」刊行の意味;〈言語〉という主題―『言語にとって美とはなにか』;『言語にとって美とはなにか』をめぐって;《修辞的な現在》まで―『言語にとって美とはなにか』以後;『共同幻想論』の彼方へ)
2 吉本隆明、最後の詩の場所―“灰暗の森”を通る道(『「野生時代」連作詩篇』を読む;『記号の森の伝説歌』を読む;表層と深層の二重性;『言葉からの触手』考)
『最後の親鸞』という思想詩―あとがきに代えて
著者等紹介
北川透[キタガワトオル]
1935年、愛知県碧南市に生まれる。58年、愛知学芸大学卒業。62年、「あんかるわ」を創刊し、90年に終刊するまで、同誌を基盤に精力的な詩と批評の活動を展開する。91年、下関市に移住し、96年から2000年まで、「九」を山本哲也氏と共同編集で刊行。2013年から2019年まで、ひとり雑誌「KYO(峡)」刊行。『詩論の現在』(全三巻)で第三回小野十三郎賞、詩集『溶ける、目覚まし時計』で第三十八回高見順賞、『中原中也論集成』で第四十六回藤村記念歴程賞、これまでの詩の実践と現代詩論への寄与で、第七十回中日文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)