内容説明
著者が関心を持ち続けてきた、非詩的領域にある作家のなかの詩の行方を問う異色の一巻。三島由紀夫における天皇制と共同体、太宰治における戦争下の文学の在り方など、喫緊の問題に接近する。三島の厖大な少年詩を読み解き宿命的な詩的資質を探る巻頭論考をはじめ、死と共同体の関係を全面的に論じた『豊饒の海』四部作をめぐる三島論、“大東亜戦争”下の文学的な戦いの限界を極めた可能性を、『散華』『右大臣実朝』などの分析を通じて追究する太宰論を収録。
目次
1 詩と共同体
2 浪漫主義の生ける廃墟―三島由紀夫『豊饒の海』論
3 告白という“偽りの機械”
4 太宰治の詩的境界閾
5 太宰治の“道化”の戦場
6 幻想の“牢獄”をめぐるノート―ミシェル・フーコー『監獄の誕生』、北村透谷「我牢獄」、太宰治『人間失格』を媒介にして
著者等紹介
北川透[キタガワトオル]
1935年、愛知県碧南市に生まれる。58年、愛知学芸大学卒業。62年、「あんかるわ」を創刊し、90年に終刊するまで、同誌を基盤に精力的な詩と批評の活動を展開する。91年、下関市に移住し、96年から2000年まで、「九」を山本哲也氏と共同編集で刊行。2013年から2019年まで、ひとり雑誌「KYO(峡)」刊行。『詩論の現在』(全三巻)で第三回小野十三郎賞、詩集『溶ける、目覚まし時計』で第三十八回高見順賞、『中原中也論集成』で第四十六回藤村記念歴程賞、これまでの詩の実践と現代詩論への寄与で、第七十回中日文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)