出版社内容情報
カチューシャは、いわゆる「民謡(フォークソング)」ではない。アメリカ生まれのジャズを出自とする「流行歌(ポピュラーソング)」だ。そして、この歌は、1941年、ソ連軍女性兵士が100万人も戦死したというヒトラーとの独ソ戦下で、大ブレイクを果たし「戦時軍国歌謡」となった。だが、日本においてはオリジナルにある「戦争の匂い」がきれいに消され、平時の「青春ラブソング」になっている。そして、現在のウクライナでは、参戦した北朝鮮の兵士たちが「カチューシャ」を朝鮮語で歌う様子が報じられ、その意味合いも興味をそそらせるものがある。本書は、何度も「懐メロ」として消えてゆくかに見えて、国家的威信が揺らぐ政治的危機になると「愛国歌」として不死鳥の甦りを見せる「カチューシャ」の歴史を、著者の体験を交え読み解いていく歌謡社会学である。白井聡氏推薦!
「カチューシャ 日本語訳」
リンゴの花ほころび
川面に霞たち
君なき里にも
春は忍びよりぬ
川面に立ちて歌う
カチューシャの歌
春風優しく吹き
夢が湧く美空よ……(訳詞・関鑑子、丘灯至夫)
【目次】
序 章 ウクライナ問題は「カチューシャ」から読み解ける!?
第1章 ラブソングからナチスをふるえ上がらせたロケット砲の愛称へ
第2章 「戦時愛国歌謡」として復活へ
第3章 日本ではなぜ「青春のラブソング」になったのか
第4章 「うたごえ運動」と「カチューシャ」
第5章 かくして「カチューシャ」は生き延びた!
第6章 歌声喫茶と東西の雪解けムード!
第7章 政治の季節の高揚と終焉に連動
第8章 リバイバル、そしてゲームとアニメのBGMへ
第9章 ドイツ、イタリア、フランス、中国では多様な替え歌に
終 章 ウクライナ戦争の決着は「カチューシャ」だけが知っている?
いま北朝鮮兵が「カチューシャ」を歌う――あとがきにかえて