内容説明
『種の起源』は、今日でも読む価値のある科学書の古典として知られてはいるが、科学技術先進国アメリカですら過半数の国民が、ダーウィンの唱える人間の進化―全ての生物は共通の祖先から時間をかけて徐々に変化してきた―を否定しているなど、出版から一六〇年以上たった今日でも、「進化」という概念が一般社会で広く認められているとは言えない。そして、時として大きな誤解や曲解のもと、人間や社会を暴走させている。それはいったいなぜなのか、そして、その暴走が人類に何をもたらしているのか。ダーウィンと同時代を生きた科学者、思想家、政治家などの人間観、生命科学の原則を共有しない「人間科学」が孕む歪、そしてコミュニケーションや思考を奇妙な方向に発展させていく人間固有の能力「言語」など、科学領域に留まらず、幅広い視点から、進化と暴走の行方を考える。
目次
序章 ダーウィンのメッセージ
第1章 『種の起源』を読む
第2章 ダーウィンと周辺の人々―人間の変異と平等
第3章 ダーウィンと人間科学
第4章 言語の特性と進化
第5章 人類の暴走と限界
ダーウィンのメッセージ再び
著者等紹介
内田亮子[ウチダアキコ]
1960年、福井県生まれ。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了、ハーバード大学大学院Ph.D.課程修了(人類学)。京都大学霊長類研究所助手、千葉大学文学部行動科学科助教授を経て、早稲田大学国際教養学部教授。専門は生物人類学、人類進化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)