総合研究現代日本経済分析第2期 水資源の国際経済学―気候・人口問題と水利用のネットワーク化

著者:佐藤 正弘【著】
出版社:慶應義塾大学出版会

商品説明

内容説明

21世紀、人類最大の難問は「水」である。今後の人口増加は水・食料が少ない地域で起こり、対応を誤れば深刻な環境破壊や資源の枯渇をもたらす。本書は、バーチャル・ウォーター貿易を介して干ばつへの対応や地下水・生態系の保全を図る、新たな水利用の理論を講築する。世界最大の「バーチャル・ウォーター純輸入国」日本は、世界に何を問うべきか?!



目次

地球の水循環と水資源の多様性
食料生産における多様性への対応―人口増加と気候変動に伴う構造変化
食料貿易を通じた多様性への対応(バーチャル・ウォーター貿易の理論;バーチャル・ウォーター貿易の有効性)
地域内連結利用と地域間連結利用
地域間連結利用の理論(フロー型×フロー型;ストック型×フロー型)
現実の制約下における地域間連結利用
付録



著者等紹介

佐藤正弘[サトウマサヒロ]
内閣府経済社会総合研究所研究官。1999年東京大学教養学部卒業、2001年同大学院総合文化研究科国際社会科学専攻修士課程修了。2001年に内閣府に入府し、同年より経済財政政策担当、2004年ジョージタウン大学大学院経済学博士課程留学、2006年内閣府国民生活局企画課、2007年慶應義塾大学経済学部非常勤講師、2009年金融庁総務企画局市場課課長補佐等を経て、2011年より京都大学経済研究所准教授(附属先端政策分析研究センター所属)、2014年8月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



出版社内容情報

本書はバーチャル・ウォーター貿易を導入し、水資源の配分を市場メカニズムによって行うという考え方を採用し、可能性を根拠づける。

▼「総合研究 現代日本経済分析」シリーズ(第2期)配本開始!
現代日本経済の重要課題に対し、確かな数的根拠と優れた知見を提供し、民主主義社会に不可欠な質の高い政策論議のための知的基盤を形成する。

▼世界の水不足を市場で解決する画期的研究!

第1回配本は21世紀最大の世界的難問と言われる「水資源問題」。
現在、石油・石炭などのエネルギー資源からレアアースなどの稀少鉱物・金属まで、さまざまな資源問題が生じているが、とりわけ深刻なのが「水」であり、なかでも食料生産に必要な農業用水の偏在が、国際的に喫緊かつ深刻な課題となっている。
この背景には、
?@かつての「緑の革命」に象徴される大規模灌漑・大量生産によって資源の枯渇や生態系の破壊がもたらされたこと、
?A気候変動によって水の攪乱(極端現象の増加)への対応が難しくなっていること、
?B購買力の低い発展途上地域における人口および食料需要の増加、
といった要因がある。

本書は、この問題に対して、バーチャル・ウォーター貿易の概念を導入し、複数地域での水資源の配分を市場メカニズムによってコーディネートするという新たな考え方を採用、その可能性を理論と実証の両面から根拠づけようとする。

資源・環境問題の解決に新たな地平を開く、国際水準の画期的研究!

はじめに

第1章 地球の水循環と水資源の多様性
 1 はじめに
 2 地球の水循環
  2.1 大気中の水
  2.2 降水
  2.3 地表面付近の水
  2.4 地表面下の水
  2.5 貯蓄
 3 水資源の賦存量の多様性
  3.1 空間的分布の多様性
  3.2 時間的分布の多様性
  3.3 賦存量の多様性と水の可能性
 4 水資源の賦存形態の多様性
  4.1 ブルー・ウォーターとグリーン・ウォーター
  4.2 フロー型水資源とストック型水資源
  4.3 本書における水資源の賦存形態の分類

第2章 食料生産における多様性への対応
―― 人口増加と気候変動に伴う構造変化
 1 はじめに
 2 20世紀の食料生産と水資源
  2.1 緑の革命
  2.2 緑の革命の成果
  2.3 緑の革命と水資源
  2.4 アフリカにおける緑の革命
 3 水資源の地理的な需給不均衡の拡大
  3.1 人口増加と気候変動による水需給の変化
  3.2 耕作地の水平拡大と生態系の圧迫
  3.3 気候変動による水賦存量の変化
 4 グリーン・ウォーターへの依存の増大
  4.1 南アジアとアフリカの水資源の賦存形態の特色
  4.2 ブルー・ウォーターをめぐる制約
  4.3 不確実性への適応

第3章 食料貿易を通じた多様性への対応(1)
―― バーチャル・ウォーター貿易の理論
 1 はじめに
 2 バーチャル・ウォーターの概念
  2.1 バーチャル・ウォーターの定義
  2.2 本書での言葉の使い方
 3 バーチャル・ウォーター貿易の基本命題(1)
   ―― 2国のケース
  3.1 基本設定
  3.2 資源投入量と生産量の決定
  3.3 財価格の変化と資源賦存量の変化
  3.4 貿易パターンの決定
  3.5 バーチャル・ウォーターの配分
  3.6 完全特化
 4 バーチャル・ウォーター貿易の基本命題(2)
   ―― 3国以上のケース
  4.1 基本設定
  4.2 要素含有量の決定とバーチャル・ウォーターの基本命題

第4章 食料貿易を通じた多様性への対応(2)
―― バーチャル・ウォーター貿易の有効性
 1 はじめに
 2 バーチャル・ウォーター貿易と水希少性の関係についての先行研究
   の評価
 3 国際貿易に体化した環境負荷の各種推計手法
  3.1 消費ベース指標、生産ベース指標
  3.2 各種の推計手法
 4 多地域間産業連関モデルを用いたバーチャル・ウォーターの推計
  4.1 消費ベースと生産ベースの水利用量
  4.2 消費に体化したバーチャル・ウォーター貿易
  4.3 消費に体化した水利用の国外依存度
 5 バーチャル・ウォーター貿易と水希少性
  5.1 本章のアプローチ
  5.2 へクシャー・オリーン・ヴァネック・モデルによる検証
  5.3 バーチャル・ウォーター貿易による耕作地の水平拡大圧力の緩
     和
 6 南北格差とグローバルな環境制約

第5章 地域内連結利用と地域間連結利用
 1 はじめに
 2 地域内連結利用の機能
  2.1 表流水と地下水の相互作用
  2.2 地域内連結利用の機能
 3 地域内連結利用の理論(1) ―― 静学モデル
  3.1 基本設定
  3.2 揚水の意思決定
  3.3 安定化機能の評価
 4 地域内連結利用の理論(2) ―― 動学モデル
  4.1 基本設定
  4.2 2期目の揚水の意思決定と安定化機能の評価
  4.3 1期目の揚水の意思決定とストック保全機能の評価

第6章 地域間連結利用の理論(1) ―― フロー型×フロー型
 1 はじめに
 2 閉鎖経済均衡と開放経済均衡
  2.1 基本設定
  2.2 閉鎖経済均衡
  2.3 開放経済均衡
 3 安定化機能の評価
  3.1 システム全体の安定化機能
  3.2 国ごとの安定化機能
 4 フロー型×フロー型地域間連結利用のメカニズムと適応特化
  4.1 システム全体の安定化のメカニズム
  4.2 国ごとの安定化のメカニズム
  4.3 適応特化

第7章 地域間連結利用の理論(2) ―― ストック型×フロー型
 1 はじめに
 2 静学モデル
  2.1 基本設定
  2.2 不確実性がない場合
  2.3 不確実性がある場合
 3 動学モデル
  3.1 基本設定
  3.2 不確実性がない場合
  3.3 不確実性がある場合
  3.4 地域間連結利用の機能の評価
 4 ストック型×フロー型地域間連結利用のメカニズムと平準化
  4.1 システム全体の平準化のメカニズム
  4.2 平準化に伴う各国の状況

第8章 現実の制約下における地域間連結利用
 1 はじめに
 2 ここまでの結論
  2.1 食料生産と水資源をめぐる2つの構造変化
  2.2  バーチャル・ウォーター貿易による地理的な需給不均衡の解消
  2.3 地域間連結利用による水レジリエンスの確保と資源保全
 3 政策措置の全体像と連結利用協定
  3.1 政策措置の全体像
  3.2 連結利用協定と連結対象の選択
 4 主体間の情報伝達と調節
   ―― バーチャル・ウォーターの役割の再評価
  4.1 バーチャル・ウォーターの役割の再評価
  4.2 利用者間の水資源の配分制度
  4.3 水管理機関による水の配分とバーチャル・ウォーター取引制度
 5 可変性・冗長性の評価と補償スキーム
  5.1 適応特化における可変性の評価と補償
  5.2 ストック型×フロー型地域間連結利用における補償スキーム
 6 オープンアクセス問題
  6.1 オープンアクセス問題と地域間連結利用
  6.2 オープンアクセス問題の解消方法
 7 地域間連結利用の可能性
  7.1 多地域間連結利用とバーチャル・ベイスン
  7.2 ローカルな多様性とグローバルなレジリエンス
  7.3 関係性によるレジリエンス、関係性による適応

付録
 付録1 定理3.2の証明
 付録2 定理3.3の証明
 付録3 多地域間産業連関モデルを用いた国際貿易に体化した環境負荷
     の


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