内容説明
役者の魅力に酔うもよし、ドラマの深さに気づくもよし。一つの役が演者によりどう変わるのか、作品に隠された意図とは何かなど、独自の視点から綴られる。『女殺油地獄』の与兵衛の不良ぶりは。心理劇『引窓』の主役は誰か。小道具の放つ意味とは。観劇歴40年、本職は精神科医である著者の目を通した新しい歌舞伎の見かたを書下ろしで贈る。
目次
与兵衛いろいろ 『女殺油地獄』の不良青年―仁左衛門、愛之助、海老蔵
義経と鼓 『義経千本桜』―初音の鼓とは何か
俺はお前に別れたくねえな 『荒川の佐吉』―相政を演じた名優たち
大蔵卿という生き方 『一條大蔵譚』から人生を学ぶ
桜丸が不憫でござる 『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」松王丸の心境
私は春永贔屓 『馬盥』における春永と光秀
親子の厳しさ 『伊賀越道中双六』「沼津」に見る父子関係
美しくない衣裳 美しくない衣裳を纏う役々
変容する小道具 扇、〓(まさかり)、碇の変わり方
鏡さまざま 『京人形』からお岩まで―鏡の明暗〔ほか〕
著者等紹介
上田由香利[ウエダユカリ]
昭和38年(1963)京都生まれ。大阪医科大学卒。精神科医。10歳頃より歌舞伎を見始め、大学卒業後より劇評を手掛け、関西・歌舞伎を愛する会発行の『大向う』や歌舞伎学会誌『歌舞伎 研究と批評』等に寄稿。現在、『上方芸能』に歌舞伎評を連載中。十三夜会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)