内容説明
高まる不確実性に脅かされ、成長の限界が問われるなかで、主流派経済学にも再考が求められている。本書では、競合する円の非共役的な重なりとして経済理論の発展史を捉え直すとともに、それらを貫流する「活動」への関心にも焦点をあてる。そのようにして、古典的パラダイムと近代的パラダイムについての理解を深め、モラルサイエンスとしての経済学の新たな枠組みを模索する。
目次
経済学史の方法をめぐって―修正クーンモデルの提唱
現代経済学のあり方を求めて―アリストテレス、スミス、リカード、ワルラス、パレート
経済学革新にとって学説史はいかなる意義をもつか
経済学の生成
アダム・ファーガスンの商業観―アート・国力・道徳
リカードウの貨幣経済論とその史的意義
J.S.ミルにおける経済と倫理
稀少性と「科学的社会主義」―ワルラスのマルクス批判
近代的パラダイムと選択の合理性―ジェヴォンズ、マーシャル、ウィックスティード、ロビンズ
モラルサイエンスにおける不確実性と合理性―ケインズ『確率論』と経済学
合理的選択と社会性(ソーシャリティ)―K.J.アローの社会的選択論
「古典」的パラダイムにおける価格理論の意義とその分析射程―スラッファ価格理論の展開
モラルサイエンスとしての経済学における「活動」の観念―センの源流をたずねて
フェアな世界内政か、システムの観察か―アドルノ、ハーバーマス、ルーマン
現代社会の課題と異端の経済学―マルクスとポランニー
経済学の本質とその未来―松嶋パラダイム論を手掛かりに
著者等紹介
長尾伸一[ナガオシンイチ]
1955年生まれ。1987年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。2002年経済学博士(京都大学)。現在、名古屋大学大学院経済学研究科教授
梅澤直樹[ウメザワナオキ]
1949年生まれ。1974年京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。1992年経済学博士(京都大学)。現在、大和大学政治経済学部教授
平野嘉孝[ヒラノヨシタカ]
1965年生まれ。1996年京都大学大学院経済学研究科理論経済学専攻博士後期課程学修認定退学。現在、富山県立大学工学部教養教育准教授
松嶋敦茂[マツシマアツシゲ]
1940年生まれ。1967年京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。1986年経済学博士(京都大学)。現在、滋賀大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)