内容説明
フランスのジャーナリスト(メディア批評)が、「ヒトラー独裁成立期」の報道記事や記者の回想録を掘り起こして検証する、警世と内省の書。“フランス・ジャーナリズム会議賞”受賞作品。
目次
ドイツのムッソリーニ
舞いもどった“セントルイス号”
『ニューヨーク・タイムズ』の深み
エドガー・マウラーの国外追放
ベルリンのブラッスリー“タヴェルヌ”
アメリカ大使館
検閲と自粛
最初の収容所のガイド付き見学
一九三三年のユダヤ人商店ボイコットにおける“役割分担”
ほかの追放
『ラ・クロワ』(十字架)紙と『リュマニテ』紙
長いナイフ、解けた呪縛
〈ニュルンベルク法〉
「あなたはユダヤ人をどうしたいのですか?」
彼らの雇い主たち
ヒトラーをインタビューする
二人の使者
特殊な自殺
ドイツの否認
〈AP〉曰く、新体制に機会を与えよう
エピローグ なぜ彼らは何も言わなかったのか?
著者等紹介
シュネーデルマン,ダニエル[シュネーデルマン,ダニエル] [Schneidermann,Daniel]
1958年、パリ生まれ。ジャーナリスト。『ル・モンド』紙で多くの署名記事執筆のほか、独自の執筆活動を25年間続けていたが、同紙批判本を擁護したことで解雇された。現在は『リベラシオン』紙に移り、メディア評論コラムを担当している。また国営テレビ“フランス5”にて、テレビ報道を論評する番組“静止画像”(アレ・シュル・イマージュ)で企画製作とキャスターを務めたが、局の方針で放送は打ち切られた。しかし同番組をインターネット上で立ち上げ、ウェブ放送を継続し、およそ2万6000人の有料視聴者を獲得している
吉田恒雄[ヨシダツネオ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
なぜ彼らは?何も言わなかったのか?
1933年、ヒトラーが首相に就任、国会議事堂放火事件を契機に、ヒトラーとナチ党は共産党やユダヤ人への弾圧を強化、国会選挙でナチ党が勝利、全権委任法を可決して、独裁体制が成立した。大きな歴史的転換期となったこの年、海外メディアやその駐在記者たちは、ヒトラーおよび「ナチ台頭」、「ユダヤ人迫害」をどのように報道していたのか? 本書は、フランスのジャーナリスト(メディア批評)が、ナチに批判的で国外追放された記者から従順で妥協的な記者まで、当時の記事や回想録を掘り起こして徹底検証する。
海外メディアやその駐在記者たちが検閲や威嚇に屈せず、欺瞞や宣伝に騙されず、ナチを告発する報道は困難極まりなかった。ナチに目をつけられていたエドガー・マウラーや、ヒトラーに独占インタビューしたドロシー・トンプソンのように辛辣な記者は、すぐに国外追放されてしまう。一方、ナチとは妥協しながら、現場に残ることが重要と考えるルイス・ロッホナーは、批判の対象となる。「トランプ現象」と「報道の自由」が脅かされる現代に警鐘を鳴らす書。三浦俊章氏(朝日新聞編集委員)推薦。〈フランス・ジャーナリズム会議賞〉受賞作品。