内容説明
十八世紀半ばに始まり、文学・政治・宗教・建築・絵画の領域に広がった、過去を回復し新たに中世に範を求める動きを、文学に現われた変化を縦軸としてたどるイギリス文化史。
目次
ゴート人到来―一七六〇年代における中世
騎士道、ロマンス、復興―チョーサーからスコットへ 『最後の吟遊詩人の歌』と『アイヴァンホー』
宗教の薄明―『最後の吟遊詩人の歌』、『クリスタベル』、「聖アグネス祭の前夜」
「貧窮者のための住居」―『対比』のピュージン
一八四〇年代のバック・トゥ・ザ・フューチャー―カーライル、ラスキン、『シビル』、ニューマン
「『アーサー王の死』がお気に入りの本だった」―マロリーからテニスンへ
歴史、中世復興とラファエル前派―ウェストミンスター宮殿、『アイヴァンホー』、ヴィジョンとリヴィジョン
歴史と伝説―詩と絵画の主題
労働者と共通善―マドックス・ブラウン、モーリス、モリス、ホプキンズ
百合と雑草―ホプキンズ、ホイッスラー、バーン=ジョーンズ、ビアズリー〔ほか〕
著者等紹介
アレクサンダー,マイケル[アレクサンダー,マイケル] [Alexander,Michael]
1941年生まれ。オックスフォード大学卒業、プリンストン大学大学院修了。セント・アンドルーズ大学名誉教授
野谷啓二[ノタニケイジ]
1956年生まれ。上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了。博士(文学)。神戸大学国際文化学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
国家の歴史観とアイデンティティの変化
本書は、18世紀半ばに始まり文学・政治・宗教・建築・絵画の領域に広がった、過去を回復し新たに中世に範を求める動きを、文学に現れた変化を縦軸としてたどるイギリス文化史である。
1666年のロンドン大火災で焼失したゴシック様式のセント・ポール主教座聖堂は、古典古代に由来する近代様式で再建されることになった。ところが、1834年に国会議事堂が焼失すると、庶民院はこれを「国民様式」で再建すべし、それは「ゴシックあるいはエリザベス時代様式」である、と規定した。中世に対する見方の、この革命的変化はなぜ、そしてどのように起こったのか。
従来はゴシック・リヴァイヴァルの建築の分野でもっぱら語られてきたこのテーマを、本書ではヴィクトリア女王の治世の数世代前から数世代後まで、内容はスコット、テニスンら多数の作家、ピュージン、ロセッティ、モリスやラスキンをはじめとするラファエル前派をめぐる人々、ディズレリ、青年イングランド派、オックスフォード運動、ニューマンら、諸芸術を超えて社会と宗教に関する新しい理想の誕生まで、より包括的な考察を行なっていく。