ニューイングランド周産期マニュアル - 胎児疾患の診断と管理 (改訂2版)

著者:ダイアナ・W.ビアンキ/ティモシー・M.クロンベルホルム
出版社:南山堂

商品説明

出版社内容情報

全世界で好評を博している周産期臨床マニュアル『FETOLOGY(胎児学)』の待望の改訂翻訳版.すべての章をUpDate,フルカラーページとし,最新の診断法や遺伝子関連の情報が追加された.134の疾患について,妊娠中の出生前診断から管理,出生後の診断・治療と予後まで,簡潔かつ的確にまとめられた臨床現場ですぐに役に立つクイックマニュアル.

序文

 今回の新しい第2版を出版できることはわれわれにとって,非常に喜ばしいことである.第2 版においても,第1版と同様に,出生前に診断される疾患に対して,その診断方法,妊娠管理から長期予後に至るまで,さまざまな方向からアプローチを行うことで,その疾患への理解を深めることを目的として書かれたものとなっている.
 第1版が出版されてからの10年間に,患者やわれわれの協力者から第1版の改善点に関して多くのご助言をいただいた.胎児奇形が診断されたときに,両親が尋ねる多くの疑問に答えるために必要な情報に効率的にたどり着くことができるため,第1 版は非常に温かく皆さんに受け入れられた.読者は患者との相談において,患者が欲する正確な情報を引き出す手助けとなるように本文が構成されていることを見出してくれた.それは,その疾患特有の超音波所見を知ることや,複雑な奇形を修復するための最近の外科的アプローチの概要を知ることであった.2000年以降,産科領域の画像診断は急速に進歩しており,第1版の画像の多くは,現代の画像描出能力を反映していない.このことは,第1版のすべての画像をもう一度確認する作業を必要とした.この最新版で,十分に改善された画像を読者や患者に提供できるようになったことは非常に喜ばしい.最新版では別の新たな試みとして,それぞれの章の最初に簡潔なKey Pointsを挿入した.これを参照すれば,忙しく時間がない診療の間に,患者に対してすぐにその病態を把握し情報を提供できる利点がある.
 第1版の「Fetology」でも述べたように,奇形をもつ胎児の診断と治療のためには,産科医,小児科医,そして小児外科医が,その境界線を取り払い,一丸となって努力する必要がある.このような場合,専門性による境界線は意味をなさない.問題解決型で多方面からのチームによるアプローチは,例えば,心疾患に対して共同して戦いに挑む循環器内科医,心臓外科医,そして放射線科医のチームと同じようなものである.
 この本は,超音波によって奇形の存在を診断された胎児と新生児に対する診療を行っており,それゆえに出生前から出生後までのさまざまな情報を必要としている臨床医のために書かれている.具体的には,一般の産科医,周産期科医,遺伝カウンセラー,小児科医,小児外科医などを読者として想定している.われわれはこの本の中に,奇形に加え,いくつかの比較的高頻度に見られる染色体異常についても,同じく情報を盛り込んだ.さらに,最近の妊娠三半期前期と中期の胎児染色体異常スクリーニングに関する,新しいアプローチの要約の章を盛り込んだ.特に妊娠三半期前期のスクリーニングに関してはこの10年間で,その標準的スクリーニング法および将来の可能性のあるスクリーニング法が大幅に変化した.
 この本は,先に述べたようにあくまで医療者に向けて書かれたものではあるが,新たな版の執筆中も,子どもが異常をもつことを指摘されて悩む両親たちの姿が頭から離れることは一時もなかった.各章は,そのような両親たちが助言を求めて病院を訪れ,そこでわれわれにぶつけてくるであろう疑問を想像し,それに対応できるようにと書かれている.われわれは,この本ができるだけバランスよく,学問的に偏らずに,両親がインターネットを通じて得る情報とかけ離れないように留意した.各章は必要な情報をすぐに見つけられるよう,統一した様式でまとめられている. Fetology は,ボストンのタフツ ニューイングランド・メディカルセンターおよびタフツ大学医学部において,1993年に共同の仕事として始まった.2000年までに,最初のこのボストンにおけるメンバーは,アメリカのさまざまな地域の教育医療センターへと散らばり,今日,この著者たちは,周産期学,新生児学,遺伝学と小児外科学といった分野で,国際的な胎児医学の専門家を代表する立場となっている.胎児異常の症例について,われわれ4人はそれぞれの専門性に基づいて異なったアプローチをしたが,その両親たちに情報を統合し,わかりやすく提供する必要があることを皆感じていた.Bianchi 博士は,小児科医,新生児科医,それに遺伝医学者であり,超音波所見とその児の予後について詳しい.Crombleholme 博士は小児外科医であるが,胎児手術についても習熟している.彼は,各疾患における胎児治療および長期予後について,多くの論文を執筆している.D’Alton 博士は,胎内での超音波診断を専門とする産科医,周産期科医である.Malone 博士は,国際的な多施設による胎児治療研究を行っており,また新たな胎児染色体異常スクリーニング法開発の先駆者でもある周産期専門医である.
 第1版と同様に,われわれのアプローチは独特なものであり,それだけに執筆者が多いと,かえって目指したようなスタイルが維持できないと考えた.胎児治療のそれぞれの章に関しては,4名それぞれが今まで受けたトレーニング,経験,患者から相談や治療を行って得た知識を統合して書かれている.われわれはこの本が,ただの多くの情報の羅列となってほしくはなかった.診断,治療までを含む,よくまとまってわかりやすいものにしたかった.そのため,この本は4 人だけで書く方がよいと考えた.
 われわれは,この本が胎児を管理していく上での新しい知見を読者にもたらすことができるよう願ってやまない.ひいてはある疾患をもつ胎児について,その出生前および出生後の両方に焦点を当ててみることにより,すでに存在する医学の境界線が取り除かれ,胎児やその両親たちの利益となることを.

Diana W. Bianchi M.D.
Timothy M. Crombleholme M.D.
Mary E. D’Alton M.D.
Fergal D. Malone M.D.


監訳者序文(第2版)

 本書の原著『Fetology』の初版が出版されたのは2000 年4 月末のことでした.第1 版の序文にも書きましたが,著者の一人であるBianchi 先生のオフィスで原著初版の原稿に触れたことが翻訳書出版の最初の一歩でした.当時の素晴らしい仲間たちに支えられ,翻訳書としては異例の早さで2 年後の2002 年4 月には第1 版が出版されました。原著の特色である,「妊娠中から産科医、新生児科医や新生児外科医など各専門家が協力して診療にあたっていこう」という考え方は,我が国の周産期医療関係者にも広く支持され,嬉しいことにほとんどの周産期医療の臨床現場で本書を使っていただきました.
 それから数年が過ぎた頃,ボストンのBianchi 先生から日進月歩の周産期医療に対応すべく第2版の編集に取りかかったとの話を聞き,どのくらい変更があるのか楽しみにしていました.2007 年10 月、学会参加の折に,以前研究を行っていたボストン市内のラボを訪ねたところ,Bianchi 先生から2 つの驚くべきことを聞かされました.1 つは,第2 版の原稿がほぼ出来上がって校正に入っており,内容も大幅に変更されて素晴らしい本が出来上がりそうだということ.もう1 つは,メジャーリーグでワールドチャンピオンになったレッドソックスの優勝凱旋パレードがこれからラボの近くを通るので,「すぐに行って松坂投手を見てきなさい」ということでした.この時ほど,胸がときめいたことはありません.
 2010 年4 月末,満を持して『Fetology』第2 版が出版されました.それは,想像以上に読みやすく,外国の書籍には珍しいくらい綺麗なデザイン,レイアウトが施され,内容も初版同様に妊娠中の診断,管理,そして出生後の診断,管理,予後やその後の遺伝相談についてまで,1 つ1 つの疾患ごとに多くの文献と共にまとめられていました.最新の診断法や遺伝子関連の記載まで追加されていて,初版とはまったく別な本といってもいいくらいに大きく変更されていました.ここ数年,環境が非常に厳しくなっている周産期医療の現場で働く関係者に,「この素晴らしい第2 版の翻訳書をできるだけ早く届けたい」と強く感じたのは言うまでもありません.そして,その思いに応えるかのように多くの有志が翻訳に協力してくださり,それを前回以上の手腕で南山堂の窪田雅彦氏が采配を振るい,その結果,おそらく翻訳書としては異例の早さで出版にこぎ着けることができたのです.
 監訳に当たっては,訳文を原文と照合してできる限り原文に忠実に,そして第1 版同様に日本語としても読みやすくなるよう心がけましたが,なお未熟な点があろうかと思われます.ご叱正いただければ幸いです.
 本書は持ち運べるような本ではありません.また,机の上や本棚に飾っておく教科書でもありません.診療の場ですぐ手にとって開いて調べることができる実用書として,これだけまとまった本はありません.毎日使っていると表紙カバーは汚れて破損してきますが,その時は,ぜひカバーを取ってみてください.カバーの下に隠れていた装丁も洋書風に素敵に仕上げてもらいました.
 最後に,短い時間の中で,忙しい仕事の合間に原稿をあげていただいた「FETOLOGY」翻訳委員会のメンバーの方々,ならびに南山堂の窪田雅彦氏と高見沢恵氏の御尽力に,心から謝意を表します.

2011年3月
宗田 聡
佐村 修

目次

PARTI 序 論 Introduction

1. 出生前画像診断
 Prenatal Imaging
2. 妊娠三半期前期における異数性染色体異常のスクリーニング
 First Trimester Screening for Aneuploidy
3. 妊娠三半期中期における異数性染色体異常のスクリーニング
 Second Trimester Screening for Aneuploidy
4. 出生前診断法
 Prenatal Diagnostic Procedures
5. 胎児治療
 Fetal Intervention

PARTII 胎児の病態管理 Management of Fetal Conditions Diagnosed by Sonography

Section A 中枢神経 Central Nervous System
6. 脳梁欠損
 Agenesis of the Corpus Callosum
7. 無脳症
 Anencephaly
8. クモ膜嚢胞
 Arachnoid Cyst
9. 大脳石灰化
 Cerebral Calcifications
10. 頭蓋骨癒合症
 Craniosynostosis
11. Dandy-Walker奇形とその異型
 Dandy-Walker Malformation and Variants
12. 脳 瘤
 Encephalocele
13. 外脳症/無頭蓋症
 Exencephaly/Acrania
14. 全前脳症
 Holoprosencephaly
15. 無水脳症
 Hydranencephaly
16. 水頭症
 Hyd


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