ポケット医学英和辞典 (第3版)

著者:泉孝英
出版社:医学書院

商品説明

出版社内容情報

ハンディで便利な医学英和辞典。海外の文献を読みこなす際に傍らに置きたい
海外の文献を読みこなす際に役立つポケットサイズの英和辞典が15年ぶりに全面改訂。医学用語を中心に、薬学や検査・看護用語なども幅広く収載。また重要な単語には訳語だけでなく解説も付し、実用性も満点。歴史的に意味のある用語や医学文献で汎用される一般用語・略語も可能な限り収載した。また、ノーベル賞受賞者を中心に人名も充実している。ポケットサイズでありながら強力な味方となる英和辞典。収録語数は7万語。

序 文
第3版 序

 「医学書の解読に役立つ」ことを目標として,故渡辺良孝博士によって編纂された『ポケット医学英和辞典』の初版は1967年に刊行された.当時,渡辺博士は,「英・米・羅を主とし,独・仏を従とする医学英和辞典」を編集方針とされた.明治の開国以来,わが国の医学はドイツ医学を範としてきたが,第一次世界大戦から第二次世界大戦の時期(1914〜1945年)を経て,アメリカ医学を範とする時代に変換を遂げた事実を受けてのことであった.第2版(2002年)において,編者は「英語(米式綴り)を主とし,現在でも使用頻度の高いラテン語,ドイツ語,フランス語などを採録」することを編集方針とした.これはアメリカ医学の重要性の高まりを意識した記述と受け止めていただきたい.

 2000年前後からの医学・医療の進歩・発展を要約しておきたい.
 基礎医学の領域において,特筆すべきことは,わが国において行われた基礎的研究が,ノーベル生理学・医学賞の授賞対象となったことである.山中伸弥博士のiPS細胞の開発(2012年),大村智博士のエバーメクチンの発見(2015年),大隅良典博士のオートファジーの機序解明の研究(2016年)である.
 臨床領域をみると,画期的な薬剤の開発がある.まず挙げられるのが本格的な抗ウイルス薬の登場である.インフルエンザ治療薬については,アマンタジン(シンメトレル?,1998年)に続いて,ザナミビル(リレンザ?,1999年),オセルタミビル(タミフル?,2001年),ペラミビル(ラピアクタ?,2010年),ラニナミビル(イナビル?,2010年)が登場してきた.2015年には,C型肝炎ウイルスを消滅させるレジパスビル/ソホスブビル配合錠(ハーボニー?)が供されるようになった.抗体医薬品と呼ばれる画期的な薬剤も多数臨床の場に提供されてきている.モノクローナル抗体(ケーラー,ミルステイン,1984年ノーベル生理学・医学賞)の医薬品への応用は1980年代に開始された.以後,抗体工学技術の進歩,特にCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)を宿主とする生産系の標準化により,関節リウマチに代表される自己免疫疾患,各種の癌治療用抗体の開発が続いている.2002年に登場したインフリキシマブ(レミケード?)をはじめとする各種の関節リウマチ治療薬は,ステロイド薬(1950年ノーベル生理学・医学賞)にも匹敵する福音を患者にもたらしている.抗癌薬としては,2001年のリツキシマブ(リツキサン?)以後,多数の抗体医薬品が低分子医薬品とともに分子標的薬として開発されてきた.また,開発の初期段階はわが国で行われながら,製品化は米国で行われたニボルマブ(オプジーボ?,2014年)に代表される免疫チェックポイント阻害薬が次々と開発されている.外科治療の面では,低侵襲手術を目指した医療ロボット,ダヴィンチ?がある.1999年に米国で開発され,2000年に米国FDAの承認を得たダヴィンチは,わが国でも既に250台導入されている.陽子線治療施設は1990年に米国に開設されたのが世界で最初であるが,2001年にわが国においても高度先進医療として承認され,現在では12施設が開設されている.また,重粒子線治療装置も国内において5施設設置されている.21世紀に入ってからの医療の進歩は目覚ましいものであるが,これら医薬品,医療機器の開発のほとんどは米国を中心に行われており,米欧の医療産業からみて,日本は巨大な市場と化しているという残念な事象が拡大している.
 このような状況のなかで行った「米欧の医学書の解読に役立つ英和辞典」を目指しての改訂作業は以下のように進められた.まず,米国の代表的な医学辞典である,『Dorland’s Illustrated Medical Dictionary』を本書第2版と対照して,Dorlandには記載されていない本書の用語を削除するとともに,未記載の用語の収録を行った.作業には,Simon Johnson氏と長井苑子博士の協力を得た.また,同様の目的で,『Current Medical Diagnosis & Treatment』の索引を利用した.そして,改訂作業のなかで,特記して感謝申し上げねばならないことは八幡三喜男博士のご尽力である.博士は,週刊誌「The New England Journal of Medicine」を毎号読破されることを生活習慣としておられたが,第2版発刊以後,本書を傍らにおかれて,記載漏れのある用語・単語が見つかると,該当の文章を写されて,その用語・単語にアンダーラインを付されたカードを編者に提供する作業を続けられた.3500枚以上のカードを頂戴した.博士のご協力がなければ,自信をもっての改訂とは言えなかったことである.カードの整理には伊藤穣博士の協力を得た.
 第3版においては,用語の更新,削除,追加とともにコンパクト化も作業目標とした.第2版においては約81000語を掲載したが,死語を中心に削除する一方で,約6000語を追加した.結果として第3版の掲載用語数は約67000語となり,コンパクトな内容とすることができた.
 第2版編集当時との大きな違いは,インターネットの普及により,医学用語(英語)の日本語訳名を容易に検索することができたことである.しかし,該当する日本語名の確実性への疑問が少なくはなかったことも事実である.正鵠を得た日本語/訳語の記載を目指して,いささかの努力を試みたが及び難きこともある.本書に記載した訳語はすべて編者の責に負うところである.ご指摘をいただければ幸いである.

 出版事情,特に辞書出版に逆風が吹く情勢下,第3版刊行の機会を与えてくれた医学書院に感謝する.そして,本書刊行を担当された医学書籍編集部光飛田修,制作部富岡信貴両氏の努力・尽力に深く御礼申し上げたい.

 本書が,医学関係者のみならず,薬学・歯学・検査・看護・介護と,広く医療関係者に活用され,急速な変貌・進展を遂げるアメリカ医学・医療の的確な把握を通じてわが国の医学・医療の向上に役立てていただくことを期待したい.

 2017年7月
 泉 孝英




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