内容説明
1930年代初め。南京の保守的な家から飛び出し、上海で働いていた世鈞は、同じ工場に勤める曼〓と恋に落ちた。しかし、互いの家族による期待と圧力、友情と嫉妬が絡み合う人間関係、さらには残酷な裏切りによって、二人は引き裂かれてしまう。別々の人生を歩んだ二人は戦後まもなく再会するが、それは過去には戻れないと思い知るためだった…。二十世紀中国きっての恋愛小説の名手、張愛玲による、珠玉の長篇を新訳で刊行。
著者等紹介
濱田麻矢[ハマダマヤ]
神戸大学大学院人文学研究科教授、翻訳家
張愛玲[チョウアイレイ]
1920年に上海の名家に生まれ、西洋と中国の文化が交錯する環境で育った。彼女の作品は、伝統と近代の狭間に生きる人々の心理を巧みに表現している。1940年代に発表した短篇小説「傾城之恋」や「金鎖記」は、戦時下の中国における愛の儚さと社会の不条理を見事に描き、高い評価を受ける。1950年代に香港、そしてアメリカへと移住した後も執筆を続け、英語と中国語の両方で作品を発表。2007年にはアン・リー監督による映画『ラスト、コーション』の原作「色、戒」が彼女の作品であったことで、再び注目を集めた。1995年にロサンゼルスで死去。その詩的な文体と鋭い人間洞察で今もなお多くの読者を魅了し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
中国で魯迅と並んで評価される、伝説の作家の代表作を新訳・文庫で刊行。一生ぶん続くことは叶わなかった、男女の恋の運命をめぐる傑作