内容説明
別れた男が他の女と暮らすと知り、私はそのことしか考えられなくなる。どこに住むどんな女なのか、あらゆる手段を使って狂ったように特定しようとしたが―。妄執に取り憑かれた自己を冷徹に描く「嫉妬」。1963年、中絶が違法だった時代のフランスで、妊娠してしまったものの、赤ん坊を堕ろして学業を続けたい大学生の苦悩と葛藤、闇で行われていた危険な堕胎の実態を克明に描く「事件」を合わせて収録。
著者等紹介
エルノー,アニー[エルノー,アニー] [Ernaux,Annie]
1940年、フランス北部ノルマンディー地方のリルボンヌ生まれ。五歳頃から十八歳まで、小さなカフェ兼食料品店を営む両親のもと、同じ地方のイヴトーという町で過ごした。ルーアン大学卒業後、長年高等教育に従事した。1974年、作家デビュー。1981年に第三作『凍りついた女』を発表。父を語った自伝的な第4作『場所』(1983年)で1984年度のルノードー賞を受賞。2008年に発表したLes ann´eesでマルグリット・デュラス賞を受賞し、2019年には国際ブッカー賞の最終候補にもなった。現在も執筆活動を精力的に続けており、2022年にはLe jeune hommeを上梓。2022年にノーベル文学賞を受賞した
堀茂樹[ホリシゲキ]
1952年生、フランス文学者、翻訳家
菊地よしみ[キクチヨシミ]
1951年生、東京大学文学部仏文科卒、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
中絶手術が違法だった時代に妊娠することの葛藤を描く金獅子賞受賞映画の原作「事件」と、元恋人への盲執を描く「嫉妬」を併録。