内容説明
沖縄が米国から日本に返還されて半世紀。佐藤栄作首相とニクソン大統領が返還に合意した際、緊急時に米国の核兵器を沖縄に再び持ち込むことを日本が認めた密約は、戦後日本の外交・安全保障が抱えるジレンマを今も私たちに突きつける。その密約に関する新たな文書を筆者は見つけた。佐藤首相向けに書いたシナリオで、首相密使を務めた国際政治学者・若泉敬氏の直筆とみられる。若泉氏が過去を告白した1994年の著書にしか記されていなかった密約に至る経緯を、「若泉シナリオ」は濃密に物語る。日本外交史の研究者たちからは一級の史料だと驚く声が相次いだ。本書では「若泉シナリオ」の全文を示し、徹底検証。沖縄返還交渉でのもう一つの密約である費用肩代わり問題を新聞記者として追及した西山太吉氏が、亡くなる前年に応じたインタビューも掲載する。
目次
第1章 見つかった「若泉文書」(国際政治学者・若泉敬;「若泉シナリオ」を読み解く;密約調査の有識者らは;岡田克也氏との対話)
第2章 「沖縄密約」前後(「基地研文書」;若泉氏とソ連、中国)
第3章 西山太吉氏の執念(極秘の「井川書簡」;西山氏へのインタビュー全文)
著者等紹介
藤田直央[フジタナオタカ]
1972年、京都府生まれ。京都大学法学部卒業、政策研究大学院大学修了。94年に朝日新聞社に入り、主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員(2010〜11年。米軍基地問題や沖縄県知事選を取材)、外交・防衛担当キャップなどを経て、19年から編集委員(日本政治・外交・安全保障)。21年から法政大学兼任講師も(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
沖縄が米国から日本に返還されてから半世紀が経った。
佐藤栄作首相とニクソン大統領が返還に合意したとき、
国民を欺く「密約」が交わされていた――。
その「密約」とは何か?
本土並みの返還、すなわち「核抜き」のはずなのに、
緊急時には米国の核兵器を再び持ち込むことを日本が認めたのだ。
この密約にかかわる新たな文書が複数見つかった。
見つけたのは朝日新聞編集委員の著者。
佐藤首相の「密使」を務めた若泉敬氏の直筆とみられる。
日米首脳会談を演出する、新文書の「若泉シナリオ」を、
本書では全文掲載する。
その内容・意味を解明し、若泉氏の全貌に迫る。
さらに西山太吉氏(元毎日新聞記者)へのインタビューも収録。
もう一つの密約である「日本による費用肩代わり」の問題を追及し、
外務省の女性事務官とともに逮捕・起訴された西山氏。
闘いは生涯続いた。逝去半年前にその「執念」を語ってくれた。