内容説明
「あぶない、あぶない、気を付けねばあぶないと思う」『三四郎』『草枕』など漱石作品にはこのフレーズが繰り返し登場する。漱石は汽車で各地を旅する近代の申し子でありながら、鉄道を通じて、競争、能率、スピード、利便性、成果主義の近代文明のあやうさ、戦争の愚かしさを語った。作品や日記、書簡などをもとに、当時の時刻表や旅行案内を参考に、できるだけ忠実に、漱石の汽車旅の足跡をたどる。当時の風景を再現しつつ叙情あふれる藪野健氏の挿絵とともに、路線ごとに、地域の近代化と漱石のまなざしを浮かび上がらせる。
目次
第1章 東海道線
第2章 御殿場線・横須賀線
第3章 市内電車・甲武鉄道
第4章 日本鉄道・信越線
第5章 関西私鉄・山陽鉄道
第6章 九州鉄道・伊予鉄道
第7章 ロンドン
第8章 シベリア鉄道・南満洲鉄道
終章 胃潰瘍と汽車の旅
著者等紹介
牧村健一郎[マキムラケンイチロウ]
1951年神奈川県生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学卒業後、朝日新聞入社。校閲部、学芸部、be編集部などに在籍し、昭和史、書評、夏目漱石などを担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
「あぶない、あぶない、気をつけねばあぶない」。『三四郎』『草枕』で繰り返される鉄道にまつわるこのフレーズは、漱石の近代への危機感にあふれている。作品に登場する鉄道風景を路線ごとに訪ねる。路線図の他、藪野健氏の情緒あふれる挿絵多数収録。