内容説明
ドイツには、国家がボランティアを支援する制度が存在し、毎年約一〇万人が参加している。ナチ時代の負の過去と向き合いながら、社会に貢献したいという市民の意思を尊重し、国家に回収されない自立した活動を支えてきた。数々の批判と課題に挑戦し続ける政策の姿から、ボランティアと社会とのあるべき関係を見つめ直す。
目次
第1章 なぜボランティアを支援するのか―日独の事例から(日本のボランティア支援政策;ドイツのボランティア支援政策;訳語をめぐる検討)
第2章 負の過去と向き合う―ボランティア支援の歴史的展開(なぜボランティアの制度化が実現したのか;象徴的政策としての環境保護―一九九三年の法制化プロセス;徴兵制停止後を見据えて―二〇〇二年法改正にみる集権化;二〇一一年の歴史的転換―変わる政策的期待;支援と干渉の陸路で―「自発性」をめぐる議論の変容)
第3章 物言うボランティア―政治教育との接続(デモ行進するボランティア;ボランティアの政治性とその社会的受容;学校外政治教育としてのボランティア;ボランティア制度における政治教育の実践;「物言うボランティア」を目指す教育の課題)
第4章 「承認の文化」に向けて―社会的包摂か、格差の再生産か(「誰一人取り残されない」政策の理想と現実;ボランティア制度をめぐる議論の展開;二〇一九年法改正における「社会的包摂」;法改正後の課題―ボランティア支援は社会的包摂に寄与するか)
第5章 なぜ義務化が支持されるのか―揺れるボランティア制度(繰り返される「義務化」の議論;ボランティアは誰のものか―リベラルな価値と制度設計;コロナ禍における議論―奉仕義務をめぐって;「義務化」支持者の論理―政治的合意の継続と変容)
著者等紹介
渡部聡子[ワタナベサトコ]
1982年北海道生まれ。北海道大学文学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター特任研究員などを経て、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院助教。専門は現代ドイツ政治、ボランティア支援政策(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)