内容説明
19世紀に発見された『法華経』サンスクリット原典写本のヨーロッパでの初の出版(ケルン・南条本)から100年。本書は、複数のサンスクリット・テキストに綿密な校訂を施し原典テキストを確定させるとともに、深い仏教理解に基づいて詳細な注解を付した画期的達成である。8年がかりの、一点一画をも疎かにしない原典に忠実な訳業により、曖昧さを残さない。読みやすいこなれた現代語訳がここに完成した。テキスト相互の対照を可能とすべく、サンスクリット原典、鳩摩羅什による漢訳テキストも併記した。
目次
説法者(法師品第十)
ストゥーパの出現(見宝塔品第十一)
ストゥーパの出現=続き(提婆達多品第十二)
果敢なる努力(勧持品第十三)
安楽の住所(安楽行品第十四)
大地の裂け目からの菩薩の出現(従地涌出品第十五)
如来の寿命の長さ(如来寿量品第十六)
福徳の分別(分別功徳品第十七)
喜んで受け入れることの福徳についての表明(随喜功徳品第十八)
説法者に対する讃嘆(法師功徳品第十九)
常に軽んじない〔と主張して、常に軽んじていると思われ、その結果、常に軽んじられることになるが、最終的には常に軽んじられないものとなる〕(常不軽菩薩品第二十)
如来の神力の顕現(如来神力品第二十一)
ダーラニー(陀羅尼品第二十六)
“薬の王”の過去と結びつき(薬王菩薩本事品第二十三)
明瞭で流暢に話す声を持つもの(妙音菩薩品第二十四)
あらゆる方向に顔を向けた“自在に観るもの”の神変についての教説(観世音菩薩普門第二十五)
“美しく荘厳された王”の過去との結びつき(妙荘厳王本事品第二十七)
“普く祝福されている人”による鼓舞(普賢菩薩勧発品第二十八)
付嘱(嘱累品第二十ニ)
著者等紹介
植木雅俊[ウエキマサトシ]
仏教研究家(東方学院)、1951年生まれ。九州大学大学院理学研究科修士課程修了。東洋大学大学院文学研究科博士後期課程中退。86年に東洋哲学文化賞受賞。91年から東方学院で中村元氏の下でインド思想・仏教思想論、サンスクリット語を学ぶ。学位請求論文「仏教におけるジェンダー平等の研究―『法華経』に至るインド仏教からの考察」でお茶の水女子大学から人文科学博士の学位を授与される(男性では初めて)。日本ペンクラブ会員、日本印度学仏教学会会員、比較思想学会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
【2008年度 毎日出版文化賞(企画部門)受賞】