「複雑系」入門 カオス、フラクタルから生命の謎まで (ブルーバックス)
「複雑系」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。「バタフライ効果」「カオス」「フラクタル」なども、一時は流行語のようになりました。では、それらの言葉で表される「複雑系の科学」とはいったいどのようなものなのか、従来の科学とはどう違うのかは、意外に知られていないように思われます。 たとえば、複雑系の科学に特有の「フラクタル図形」と呼ばれるものは、1次元でも2次元でもなく、小数で表される次元をもちます。また、面積は有限であるにもかかわらず無限の長さの曲線をもつ図形もあります。さらには、「面積がゼロ」の図形も存在するのです しかし、複雑系の科学はけっして、毛色の変わった「特殊な科学」ではありません。ニュートンによる科学革命は、相対性理論や量子力学によって完成の域に近づき、いまや大成功を収めたかに見えます。しかし、じつは、宇宙がどうやって始まったか、生命はどうやって生まれたか、といった謎は、いまだに解くことができないままです。それは「予測可能」で「線形的」な近代科学の限界ともいわれています。 これに対して複雑系の科学は「予測不可能」で「非線形」な科学です。宇宙や生命の謎を解くには、複雑