【2024.5月 月刊 健友館】
深見梅店の深見さんは今から5年ほど前に知り合いに紹介された梅干し屋さんでサンプルを送ってもらい、電話で話をさせていただいた。
和歌山の南部町よりも少し南にある富田町で無肥料無農薬で梅を栽培している。
毎週のように魚釣りで近くを通っていた場所なので「いつかお伺いします」と言っていたものの、健康ストア健友館では中本農園さんの梅に力を入れていた為、安易に行くことができなかった。
この時から少し過ぎたある日、取引先のムソーから深見梅店さんの梅をムソーブランドで販売すると聞いて注文ロット関係なく深見梅店の梅を販売ができる、ムソーさんありがとうと安堵したような気持ちになった。
ムソーが主催する「食の未来を創造する会」の会合が年に2回あり、今年1回目は4月に深見梅店に行くことになった。
全国から来る仲間に自慢しながら釣り上げた魚を食べてもらいたいと、早朝にボートを出したが全く釣れず、早々に切り上げた。
待ち合わせの時刻まではまだまだ時間があるので深見梅店の近くをプラプラしていると、なんとなんと四万十川で有名な沈下橋があるではないか!
ここでは潜水橋と言い、四万十川を学んで作ったという。

一通り楽しんだところでちょうどいい時刻になったので集合場所の深見梅店の真横に出来上がったムソー食品工業の新社屋に向かった。
ムソーと深見梅店との出会いはドイツで行われるオーガニック食品の世界有数の見本市「BIOFACH」の会場。深見梅店は当時、有機で梅を作ったものの販売先が無く少しでも情報を得るためにドイツにやってきた。
ムソーはムソー食品工業の社屋の老朽化と共に有機の梅の原料の確保が急務だったのでBIOFACHでの出会いは互いに補える関係となった。
深見梅店では梅干しの生産はもちろんの事、奈良県にあったムソー食品工業の年季の入った 機械を引き継ぎ、無双本舗の鉄火みその製造も行っている。

製造工場は新しく建てたので清潔でとてもきれいだ。
一通り工場見学を終え、全国の自然食品店と深見梅店の懇親会。
ここで釣った魚を食べてもらいたかったが、とても残念だ。
次の日は梅干しの乾燥場と圃場の案内だ。

深見梅店のやっている有機栽培の梅はシミが多くなる。
品評会などではシミがない綺麗な梅の評価は高く、シミががあるのはもってのほか。
見た目が悪いと一般受けせず、お客様からも避けられがちだが、深見さん曰く、シミがある梅ほど有機栽培の証である。
シミは漂白剤で落とせるが、それを行わないのは有機ならではの証拠でもある。
梅干しの栽培は接ぎ木せず、種から苗木を育て圃場で実をつけるのを待つ。
収穫までには時間がかかるが一旦収穫ができるようになると木の寿命が長いため、長期間収穫できる。そして何より自然に近い。
もちろん苗木や植え付けをした段階で枯れてしまうこともあるが、過酷な自然環境に打ち勝つ強い樹だけを残している。
収穫できるまで苗木の間は土づくりのために肥料は使うが、それ以降は全く肥料は使わない。
そうしてより自然に近い、強い樹の梅が深見梅店での梅干しとなる。

この日は暑くもなく、寒くもないちょうどよい気温の日で、ホトトギスが鳴き、気持ちいい風が吹き、時間が過ぎるのを忘れるくらい心地よい時でした。

生命感あふれる圃場は虫が多く、驚くことに4月の中旬にセミの声も聴いた。
ここでは当たり前の光景だそうで、農作業のお昼のおにぎりがとても美味しいらしい。
こんな気持ちの良い圃場で育った梅は美味しく体に良いわけだ。