【2023年11月 月刊 健友館】
日本全国の自然食品店が集まる『食の未来を創造する会』の勉強会が開催された。
今回の集合場所は三河安城。
この地が豆味噌、たまり醤油、白醤油、お酢、日本酒、みりんといったわれわれ日本人が使う発酵調味料が盛んに醸造されている地域とは、恥ずかしながら初めて知った。
最初に訪れたのは白だしを世の中に広めた七福醸造。
東海地方ではよく使用されている白醤油の醸造だけを行っていたが、白醤油とだしを合わせた「白だし」を開発。
爆発的な人気を博し、製造しているのは白醤油と白だしのみだが、大きな工場を有している。
一般的な醤油の小麦と大豆の割合は5:5に対し、白醤油は小麦9:大豆1だ。
日本で七福醸造だけが製造している有機JAS認定の白醤油は有機原料使用もそうだが、長期熟成にもこだわっている。
通常2ヵ月で出来上がるところを質の高い旨みを引き出す為に約8カ月間の長期熟成。
また白だしはこの白醤油と有機乾しいたけは九州産のどんこ、鰹節は本枯節のみで料亭の職人の支持を得ている。
醸造樽から一番搾りの白醤油もろみを味見させてもらった。「うまい」。
発酵しすぎるので商品には出来ないそうだが、これに一番味が近かった、国産有機白醤油を帰り際に購入させてもらった。
2日目に訪れたのは丸又商店。
ここは「オーガニックたまり」を作っている。
たまり醤油は刺身ではよく使う調味料だが、それしか思いつかない。
ただ、その味は甘く、とても美味しい調味料だが、それもそのはず。
原料は大豆と食塩のみ。
醤油ででうま味を司どっているのは大豆の役目で小麦は香りの役割だそうだ。
小麦を使用していないため、糖質が少なく発酵に時間がかかり、歩留まりもよくないため、非常に生産効率は悪いそうだが、うま味がとても強い。
うま味が甘いという表現に変わってしまうほど。
丸又商店の「オーガニックたまり」は店舗の方で在庫していた商品だったが、ある時期から棚から無くなった。
それはコロナ禍でグルテンフリーや小麦アレルギー対応の需要が海外で爆発し原料が無くなったそうだ。
現在は落ち着きを取り戻し、国内出荷もできるようになっている。
販売の90%が海外輸出で国内が10%のようだ。
海外向けは圧搾したものを商品として輸出しているが、国内向けの商品は醸造桶の底から滴り落ちた液体のみを集めて充填したもので、きれいな赤みがさした貴重な部分になる。
雑味が少なく、味わいも濃厚。国内は特別なものを分けていただいていることとなる。
建物や木桶は100年以上の歴史あるが、製造場所が第一種低層居住地区のため、工場の増設や建て替えができない。
土壁や木桶に、長年住みついた菌が、程よい通気性と醸造に適した気候により味を醸し出している。
仕込み時期は通年で1年半ほど熟成させる。
利用方法は初めに書いた刺身ぐらいしか知識がなかったが、見学が終わって話をしている時に「たまり」を使ったお料理を試食させてもらった。
豚の角煮、それとナッツに「たまり」絡めたおつまみみたいなお料理だ。
「たまり」を少し煮立てると照りが出るらしく、最後にサラッと振りかけて煮るだけでうま味がでて一段と美味しくなる。
まるで料理上手になったかのような味になるので、1つ常備しおきたい調味料だ。
初日に七福醸造で見かけた前掛けがかわいくて買おうとしたところ4000円と聞いて躊躇してしまった。
買っとけばよかったかなと少し後悔していた矢先、ここ丸又商店にも前掛けが売っているのを帰りの車に乗り込む直前で知った。
皆を待たせて慌てて買ったがここ三河安城での記念となり、これからの私の制服にもなるのでとても良かった。