八戸周辺は、三陸の豊かな海を背景にして、ウニとアワビがよく獲れます。その昔、漁師がそのウニやアワビといった海の恵みを豪快に盛って浜辺で食べた煮付け料理が「いちご煮」のルーツ。それが大正時代に料亭料理として供され、お椀にきれいに盛り付けてお吸い物としていただくようになり、現在では、晴れの席には欠かせない地域を代表する郷土料理になりました。
「いちご煮」の名前は、お椀に盛り付けたとき、乳白色の汁に沈む黄金色のウニの姿がまるで、『朝靄の中に霞む野いちご』のように見えることから名づけられた大変風流な名前です。お椀の中で野いちご摘みをするように、海の恵みを摘まんで味わってみませんか。
海の香りと旨味を存分に楽しめる八戸の郷土料理「いちご煮」。しかし、時の流れと共にウニやアワビは高級食材として扱われ、家庭で気軽に食べられるものではなくなってしまいました。そんな状況を何とかしたいという思いから開発されたのが、1980年に誕生した味の加久の屋の『いちご煮缶詰』です。郷土料理「いちご煮」の味を求め3年もの開発期間を要し、日本で初めて缶詰にすることに成功しました。その後も時代の変化に合わせて改良を重ね、現在に至ります。この『いちご煮缶詰』の誕生によって「いちご煮」は再び手軽に食べられるものになり、お盆やお正月など人々の集まるときや、ちょっとしたお祝い事には定番の、地域の人々の生活に融けこむ「海の恵みのスープ」として親しまれています。