内容情報
■絵画の歴史と科学の歴史には、相関関係があると言われている。ルネサンス期やオランダ絵画の隆盛とほぼ時期を同じくして、脳・神経科学にも大きな転換点が訪れたのではないか。ルネサンスと対応する転換期は、アラビアからギリシャ・ローマ時代の成果の逆輸入に始まる西ヨーロッパの文化的発展期である。またフェルメール、レンブラントやロイスダール等を輩出したオランダ絵画の隆盛期は、17世紀の科学革命の時期に対応している。
■そこで17世紀の科学革命と脳・神経科学の関連を考えるうちに、デカルトの存在が浮かび上がってきた。このデカルトがヒントになって意識やクオリアの問題と自然科学との関係に注目。
■本書では、以上のような視点で脳・神経科学の源流をたどり、同時に神経科学の側からこの問題の哲学的側面も考えてみた。
■神経科学の研究に携わる学生や若い研究者にとって、(1)脳の科学史の入門書、(2)自然科学(神経科学も含まれる)の基本原理である物理学との関連も考えるきっかけ、(3)さらに心身問題の哲学的側面の入門書、となりうるのではないか。(4)フランス人の哲学者や科学者について必然的に言及することになった結果、フランス科学思想史の側面の紹介にもなっている。(本書「はじめに」より)