翌日発送・会計利益と課税所得/永田守男

出版社名:森山書店
著者名:永田守男
発行年月:2008年10月
キーワード:カイケイ リエキ ト カゼイ ショトク、ナガタ,モリオ
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内容情報
会計はなぜ国によって違う必要があるのか。会計は利益を算定し、その利益をもとに配当や税等が決定されるプロセスを明らかにしている。このプロセスへの合意獲得手法が異なるに過ぎないのではないか、そしてその本質は変わらないのではないかと思索した著者の前に浮かび上がったのは、日米両国では税務会計と財務会計の関係性が大きく異なる、とする一般的な理解である。日本の税務会計と財務会計が確定決算主義と損金経理要件で強く結びつくのに対し、アメリカではそのような要件は極めて限定的であり両会計は独立していると説明される。たしかに、アメリカの税法である内国歳入法典の条文を検討する限りにおいては、損金経理要件等に相当する規定は極めて限定的である。ゆえに上記の理解を否定するものではない。むしろ本書の目的は、アメリカにおいて両者の関係性がどのように決まるかを、そして両会計が独立の関係性を纏いながらも相互に影響を及ぼしながら一体となって成立していることを明らかにするものである。
 アメリカでは形式上は独立した制度でありながらも、両会計の関係性については常に議論の対象となってきた。その議論はときに一致の方向へと進むときもあれば、逆に拡大の方向へと進むときもある。その議論は理論の発展というよりむしろその時々の社会状況に影響を受けた適切な距離感を探る議論であった。第1章から第5章では税務会計における財務会計の浸透状況とその距離を探る議論を考察している。他方、財務会計では、税務会計とは異なり、両会計の距離に関する議論は直接的ではない。少なくとも、両会計の目的の相違を明らかにした最高裁判所判決以降、財務会計において両会計の一致を求める議論は後退している。それに代わって、距離感の議論は税効果会計として表出する。第6章から第8章では、両会計の距離が広がれば広がるほど、財務会計の観点から両会計をつなぐ税効果会計に制度上の補強が必要とされ、その距離に調整が図られる状況を考察している。
 さらに本書ではエンロン事件を契機とした会計不信に対する制度的な対応を素材として両会計の関係を明らかにしている。会計不信は財務会計だけでなく税務会計にも及んだ。両会計は独自の論理で対応しながらも一体となって制度的な補強が図られた。エンロン事件への対応が両会計の一体性を図らずも提示しているといえる。
 両会計に普遍の安定的な距離が存在しているわけではない。エンロン事件はこれまでの両会計の距離に変容をもたらし、多くの制度改正をもたらした。制度改正後の両会計の距離は確定したとはいえず、新たな距離を探る動きはますます複雑な様相を見せている。