内容情報
準絶滅危惧種であるトウキョウダルマガエルやナゴヤダルマガエルは一生を水田周辺で過ごすため、水田環境と農法(田植え時期や水管理、中干しの有無と強度など)によって保全できる余地が大きい。近年、ピットタグを用いた研究によって、ダルマガエル類の越冬や春の這い出し行動などの生態は、近年著しく進んでいる。本書はその成果を詳しく示しつつ、稲作のあり方や水利施設等の工夫、住民の活動などによってダルマガエル類を保全する対策の例も示す。
【「まえがき」より要約】
水田周辺に生息する野生生物が減少してきたなか、近年、ダルマガエル類(ナゴヤダルマガエルとトウキョウダルマガエル)もその減少が著しい。
ナゴヤダルマガエルは環境省のレッドデータブック公表当初から希少種として掲載され、現在は絶滅危惧IB類に選定されている。
それまで普通種として関東から東北の太平洋側に分布していたトウキョウダルマガエルも2006年になり準絶滅危惧として同省レッドリストに掲載された。
ダルマガエル類は、その種自体が希少であるだけでなく、 水田や畦畔に生息する昆虫類などを食べる捕食者として、また高次の捕食者の餌資源として、水田水域の生態系において重要な位置づけにある。
さらに、ダルマガエル類はその一生を水田周辺で過ごすことがわかっており、その保全のために水田の環境(田植え時期や水管理、中干しの有無や強度など)や構造(土地改良事業の実施のあり方など)を本種が生息できる環境にしていく必要がある。
本書は、近年著しく進んできたダルマガエル類の生態や工学的な保全手法についての研究成果をわかりやすく紹介する。
あわせて、現在取り組まれている技術的(工学、農法など)、組織的(住民活動、行政の取り組み)な保全対策の例を紹介する。
【目次】
カラー口絵
はじめに
第1章 なぜ、いまダルマガエル類なのか
第2章 日本のダルマガエル類:分類と分布
第3章 トウキョウダルマガエルの生態
3-1 トウキョウダルマガエルに着目した理由
第4章 ナゴヤダルマガエルの生態
第5章 ダルマガエル類を保全するにはあとがき
引用文献
【執筆者(執筆順)】
守山拓弥(宇都宮大学)松井正文(京都大学名誉教授=特別寄稿)野田康太朗( NTCコンサルタンツ株式会社)茂木万理菜(栃木県農政部)中島直久 (帯広畜産大学)中田和義(岡山大学)多田正和(元・岡山大学)伊藤邦夫(元・川崎医科大学附属高等学校)中嶋諒(岡山大学)渡部恵司(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)齊藤光男(株式会社ウエスコ)水谷正一(宇都宮大学名誉教授)内藤順一(広島県野生生物保護推進員)貸谷康宏(株式会社ウエスコ)井上龍一(奈良教育大学附属小学校)