内容情報
青森県の農家・木村秋則さんの『奇跡のリンゴ』(2008年)によって一気に知られるようになった自然栽培。肥料と農薬は使わないが、耕起や除草は必要に応じて行なう。著者によれば、放任ではとれない。自然栽培の本質は、「自律的栄養塩供給システムをつくる」こと。すなわち、肥料を与えなくても養分が供給されるようになる管理が必要。カギは土壌微生物。本書では、水田と畑に分けて無施肥でとれるしくみづくり、無農薬でとれるしくみづくりを解説。
【目次】
はじめに
序章 有機農業の復権
作物生産は窒素によって制限されてきた/アンモニアの化学合成から始まった慣行栽培/「緑の革命」と食糧の世界的な増産/慣行栽培の負の側面と有機農業の見直し/有機農業の未来と自然栽培のポテンシャル/自然栽培は農地に自律的システムを作ることを目指す栽培である
1章 土壌の自律的栄養塩供給システムとは何か
1.長期無肥料での作物生産の可能性/2.土壌の窒素循環における微生物の役割/3.有機物に含まれる窒素の無機化/4.土壌の自律的な窒素供給には生物的窒素固定が必要である/5.土壌におけるリンとカリウムの循環/6.自然栽培におけるリンとカリウムの持続的供給
2章 無肥料下での水田土壌の自律的栄養塩供給システム
1.長期無肥料水田の収量予測と実際収量のズレ/2.自然栽培水田間の収量差の原因は気象条件が関係する/3.長期無肥料で多収を達成するためには窒素固定が重要/4.自然栽培水田での窒素固定細菌の実態/5.自然栽培水田は温室効果ガスの放出を抑制する?
3章 無肥料下での畑土壌での自律的栄養塩供給
1.自然栽培畑作の生産制限要因は窒素である/2.畑地での窒素固定/3.畑土壌の栽培管理/4.リン酸による作物生産制限/5.自然栽培畑作成功のための土壌管理
4章 無農薬栽培の可能性
1.無農薬栽培は可能か/2.自然栽培はただの無農薬栽培ではない/3.有害生物の防除法
4.生物の戦略と耕種的防除/5.多様性の働き/6.生物の増え方/7.攪乱と生態系/コラム1 有機栽培がかかえる混乱
5章 除草剤を使わない雑草防除
1.作物と雑草の競争/2.作物と雑草の競争に関係する生物的特徴/3.水田での雑草防除/4.畑での雑草防除
6章 無農薬で害虫をどう抑えるか
1.作物害虫の種類/2.無農薬での害虫防除/3.天敵防除/4.天敵利用の実例/5.天敵の利用法/6.土着天敵活用のための環境整備/7.天敵以外の防除
7章 無農薬で病気をどう抑えるか
1.病原菌の種類と病気/2.病害防除の基本的考え方/3.農地における感染源の排除/4.感染経路の遮断/5.感染後の発病抑制
8章 自然栽培農産物はなぜ美味しい
1.美味しさを決めるもの/2.野菜の化学成分と美味しさ/3.リンゴの甘味と美味しさ/4.米の美味しさ/コラム2 自然栽培と自然農法 ―無肥料・無農薬栽培の歴史を辿るー
あとがき
参考文献
索引